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業務プロセス改善の進め方|課題発見から実行・定着までの実践ガイド

この記事でわかること

  • 業務プロセス改善の目的と効果
  • 業務プロセス改善手法の種類
  • 業務プロセス改善プロジェクトの進め方

企業が競争力を維持し成長を続けるためには、効率的な業務運営が欠かせません。その中でも「業務プロセス改善」は、無駄や非効率を取り除き、コスト削減や品質向上を実現する重要な取り組みです。どれほど優れた商品やサービスを持っていても、業務フローに問題があればコストは増大し、顧客満足度の低下にもつながります。逆に改善が進めば、生産性向上や迅速な意思決定など、大きな成果を生み出せます。

しかし、多くの企業では「どこから着手すべきか」が分からず、現場は日常業務に追われて非効率が当たり前になっていることも少なくありません。さらに経営層と現場の認識にずれがあると、改善活動は長続きせず一時的で終わってしまいます。そのため改善の必要性を理解していても、具体的な進め方が描けず停滞するケースが目立ちます。

本記事では、業務プロセス改善の目的や効果を整理し、課題の発見方法から改善手法、成功事例までを分かりやすく解説します。小さな改善から大規模な改革まで、さらにITの導入や各種フレームワークの活用まで幅広く取り上げ、定着の仕組みや失敗を防ぐためのポイントも紹介します。

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目次

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業務プロセス改善の目的と効果

業務プロセス改善は、単なる効率化の取り組みではなく、企業の持続的成長や競争優位を築くために欠かせない重要な施策です。本章では、その目的と効果について、企業競争力との関係や定量・定性の両面から解説します。

業務プロセスの改善が企業競争力に直結する理由

企業が競争力を維持・強化するためには、限られたリソースを最大限に活用し、他社よりも優れた商品やサービスを提供し続ける必要があります。そのために重要となるのが「業務プロセス改善」です。

業務の流れを見直し、無駄や非効率を削減することで、生産性を大幅に高めることができます。結果として、同じコストでより多くの成果を生み出せるようになり、市場での優位性を確保できるのです。

さらに、業務プロセス改善はコスト削減だけでなく、変化への柔軟な対応力を高める効果もあります。急速に変化する市場や顧客ニーズに対して、硬直的な業務フローでは対応が遅れがちですが、改善を進めることでスピード感ある体制を築けます。結果として、効率性だけでなく顧客価値の迅速な提供や企業ブランドの信頼強化にもつながります。

業務プロセスの改善による定量・定性効果|コスト削減・品質向上・顧客満足度

定量的な効果

業務プロセス改善は、数値で把握できる明確な成果をもたらします。その代表例がコスト削減と生産性向上です。二重作業や不要な承認フローを取り除くことで、人件費や運用コストを直接削減できます。

同じ人数でもより多くの業務を処理できるようになり、その結果、売上や利益率の改善にも直結します。これらの成果は定量データとして可視化しやすいため、経営層にとっても投資効果を評価しやすいメリットがあります。

定性的な効果

一方で、数字には表れにくい定性的な効果も見逃せません。業務の流れが整理されることで品質のばらつきが減り、安定したサービスを提供できるようになります。これにより顧客満足度が向上し、リピーターや口コミによる新規顧客の獲得につながります。

さらに、従業員は「なぜこの仕事をするのか」という目的を再認識でき、働く意義を実感しやすくなります。これはモチベーション向上や離職率低下に寄与し、改善活動を継続的に推進する力となります。

また近年では、環境負荷の低減やCSR(企業の社会的責任)への貢献といった観点も注目されており、例えば紙の使用量削減はコスト削減と同時に企業イメージ向上にもつながります。

業務課題の3つの特定方法

業務プロセスを改善するためには、まず「どこに課題があるのか」を正確に把握することが出発点となります。課題を特定しないまま改善策を講じても、効果が薄かったり、逆に新たな問題を生む可能性があります。

そのため、データに基づく客観的な分析と、現場の声を踏まえた主観的な把握を組み合わせることが大切です。さらに抽出した課題には優先順位を付けることで、次に解説する具体的な分析・抽出方法へとスムーズに繋げることができます。

1. データ分析によるボトルネック発見

データ分析は、業務プロセスにおけるボトルネックを明らかにする有効な手段です。例えば、業務フローごとの処理時間、エラーレート、リードタイム、コスト構造などを数値として集計し、統計的に比較することで「どの工程に時間やコストが偏っているか」を把握できます。

ERP(基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理システム)などを活用すれば、自動的にデータを抽出し、日常業務の中で見えにくい非効率部分を可視化できます。また、単なる平均値ではなく、分布や異常値を確認することで、特定の条件下で発生する隠れた課題も見つかることがあります。

2. 現場ヒアリング・観察での課題抽出

一方で、数値だけでは把握できない課題も多く存在します。そこで重要になるのが、現場社員へのヒアリングや業務観察です。実際に業務を担っている人々の声を聞くことで、「なぜ時間がかかっているのか」「どんな心理的ストレスが発生しているのか」といった数値には表れない課題を抽出できます。

例えば、手順が複雑で新人教育に時間がかかっている、承認フローが複雑で意思決定が遅れている、システムが直感的でなく入力ミスが頻発している、といった問題は現場の声からしか見えてきません。

また、現場を直接観察することで、本人すら気付いていない無駄な動作や、部門間コミュニケーションの断絶といった潜在的な課題が見えてくる場合もあります。特に「慣れ」で見過ごされている非効率は、外部の視点や第三者の観察によって初めて明らかになることが多いのです。

3. 課題の優先順位付け

課題が洗い出された後は、それらをすべて一度に解決しようとするのではなく、優先順位を付けることが不可欠です。優先順位付けの基準としては、

  • 改善によるインパクトの大きさ(コスト削減や生産性向上の効果)
  • 実現に必要なリソースや時間
  • 短期的に成果を出せるかどうか(クイックウィンの有無)

などが挙げられます。

さらに「従業員のモチベーションや定着率に影響を与える課題」も優先度が高いといえます。例えば、非効率な承認プロセスが日常的な不満を生み、離職率の上昇につながっている場合、それを改善することは企業にとって定量的効果以上の価値があります。

また、課題を階層的に整理し、「根本原因」と「派生的問題」を区別することも大切です。派生的な問題ばかりに対処すると、結局また別の場所で不具合が生じます。

業務プロセス改善の手法4選

業務プロセス改善には、組織の現状や課題の深刻度、目指すべき成果に応じて様々なアプローチがあります。単に効率化するだけでなく、従業員の働きやすさや顧客満足度の向上、さらには組織文化の変革にまでつながることもあります。ここでは、代表的な4つの手法について解説します。

1. 小規模改善(クイックウィン)

小規模改善、いわゆる「クイックウィン」とは、短期間で実行でき、即効性のある改善策を指します。

例えば、承認フローのステップを1つ減らす、書類のフォーマットを統一する、会議の時間を短縮するなど、現場で気づいた小さな工夫を積み重ねていく方法です。これらは一見すると些細な取り組みに見えるかもしれませんが、従業員のストレス軽減や業務スピードの向上に直結し、結果的に組織全体の生産性を高めます。

また、クイックウィンは「改善の成功体験」を積む上でも重要です。大規模な改革は成果が出るまでに時間がかかりますが、小規模改善はすぐに効果を実感できるため、従業員のモチベーションを高め、継続的な改善活動への参加意欲を促進します。

特に改善文化を根付かせたい企業にとって、クイックウィンは最初の一歩として非常に有効なアプローチです。

2. 抜本的改革(BPR)

BPR(Business Process Reengineering)は、既存の業務プロセスを根本から見直し、ゼロベースで再設計する手法です。

単なる効率化ではなく、業務の目的や価値を問い直し、大胆に再構築することで、劇的な生産性向上やコスト削減を実現します。例えば、製造業であればサプライチェーン全体を再編する、金融業であれば従来の紙ベース手続きを完全にデジタル化するなど、企業の仕組みそのものを変える取り組みです。

BPRの特徴はリスクとリターンの大きさです。大規模な投資やシステム導入が伴うため失敗すれば損失も大きくなりますが、成功すれば競合に大きな差をつけられる可能性があります。また、BPRは従業員の役割や組織体制にまで影響を及ぼすため、単なるプロセス改善というよりも「経営改革」と言えるでしょう。

3. ITツール・自動化(RPAツール、ワークフローシステム)

近年の業務改善において欠かせないのが、ITツールや自動化技術の活用です。代表例としてRPAツール(Robotic Process Automation)やワークフローシステムがあります。

RPAツールは定型的で繰り返し行われる作業、例えば請求書処理やデータ入力を自動化することで、人間がより付加価値の高い業務に集中できるようにします。一方、ワークフローシステムは承認や依頼の流れをデジタル化し、業務の可視化とスピードアップを実現します。

これらのITツールは導入そのものが目的ではなく、「業務をどう変えるか」という視点で選定・設計することが重要です。また、自動化によって単純に工数が減るだけでなく、ヒューマンエラーの削減、コンプライアンス遵守の強化、ナレッジの蓄積といった副次的効果も得られます。

昨今ではITツールの種類は様々です。業務の効率化や自動化に役立つITツールについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

参考記事:【2025】最新おすすめの業務効率化ツール18選|ツールの種類や選び方を解説

4. 改善フレームワーク(PDCA、Lean、Six Sigma)

業務改善を一過性の取り組みではなく、継続的な活動として根付かせるためには、フレームワークを活用することが効果的です。代表的なものにPDCA(Plan-Do-Check-Act)LeanSix Sigmaがあります。

PDCAは最も基本的な手法で、計画・実行・評価・改善を繰り返すことで、徐々にプロセスを磨き上げていきます。Leanは「ムダの排除」を軸にプロセスを効率化する考え方で、トヨタ生産方式に代表されるアプローチです。Six Sigmaは統計的手法を用いて品質のばらつきを減らし、欠陥率を限りなくゼロに近づけることを目指します。

数字やデータを重視する企業ではSix Sigmaが効果的であり、柔軟でスピーディーな改善を求める現場ではLeanが適しています。また、PDCAのようなシンプルな枠組みは、改善活動を始める際の第一歩として取り入れやすいです。

これらのフレームワークは単体で用いられることもあれば、組み合わせて適用されることもあります。重要なのは、企業の文化や課題に合った方法を選び、従業員全員が改善の考え方を共有することです。

業務プロセス改善プロジェクトの進め方6ステップ

業務プロセス改善は一度きりの取り組みではなく、組織全体に継続的な成果をもたらす仕組みづくりが重要です。ここでは、プロジェクトを着実に進めるための6つのステップについて解説します。

STEP 1|改善目標と範囲の明確化

最初のステップでは、改善の目的と適用範囲をはっきりさせることが重要です。目的が「コスト削減」なのか「品質向上」なのか、あるいは「顧客満足度の向上」なのかを曖昧にしたまま進めてしまうと、後々の施策選定や評価基準がぶれてしまいます。

また、対象とする業務範囲を明確に区切らないと、改善対象が広がりすぎてリソースが分散し、効果が薄れてしまうこともあります。ここでのポイントは、「SMART」な目標(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)を設定することです。

さらに、経営層の意向や現場の期待を調整しながら、共通認識を形成しておくことが後の推進力になります。

STEP 2|現状プロセスの可視化

次に必要なのは、現在の業務プロセスを正確に把握することです。フローチャートやBPMN(Business Process Model and Notation)を使ってプロセスを図式化すると、関係者全員が同じ理解を持ちやすくなります。

現状把握では、システム上のデータだけでなく、現場で実際に行われている非公式な手順「暗黙知」となっているやり方も重要です。

例えば、営業担当が顧客対応の際にExcelで個別管理をしている場合、システム上では見えないが業務フローに大きな影響を与えています。この可視化の段階で、業務の重複や非効率な動きを発見できることも多く、次の課題分析に直結する基盤が整います。

STEP 3|課題分析と原因特定

現状が把握できたら、次は課題を抽出し、その根本原因を明らかにします。単に「業務が遅い」「ミスが多い」といった表面的な問題にとどまらず、「なぜそのような状況が発生しているのか」を深掘りすることが大切です。ここで有効なのが、フィッシュボーンダイアグラム(特性要因図)や5 Whys(なぜを5回繰り返す分析手法)です。

例えば、請求書発行が遅いという課題があった場合、「担当者が忙しい」だけでなく「システムと会計ソフトが連携していない」「承認フローが複雑」といった原因が潜んでいる可能性があります。この段階で正しい原因を特定できるかどうかが、改善成功の可否を大きく左右します。

STEP 4|改善策の設計と選定

課題の原因が明らかになったら、次は改善策を考案します。改善策は必ずしも大掛かりなシステム導入や組織再編である必要はありません。ちょっとした承認フローの簡略化やマニュアルの整理だけでも、大きな効果を生むことがあります。

一方で、抜本的な改革が必要なケースでは、ITツールや自動化技術の導入、部門間の業務統合などが選択肢に入ります。ここで重要なのは、複数の改善案を比較検討し、効果と実行可能性のバランスを見極めることです。ROI(投資対効果)を基準に優先順位をつけると、経営層や現場からの納得感も得やすくなります。

STEP 5|施策の実行とモニタリング

選定した改善策は、計画に基づいて実行します。ただし、導入したら終わりではなく、必ずモニタリングを行い、進捗と効果を追跡することが求められます。

実行段階では現場からの抵抗が起こりやすく、想定外の問題が生じることも珍しくありません。そのため、定期的なチェックポイントを設け、必要に応じて軌道修正を行う柔軟性が不可欠です。

また、現場スタッフが改善策を理解し、日常業務で活用できるように教育やサポートを並行して行うことも効果定着の鍵となります。特に、改善に関わるメンバーが「自分たちの意見が反映されている」と感じられる仕組みを作ることで、抵抗感を和らげることができます。

STEP 6|改善成果の評価と定着化

最後に行うべきは、改善の成果を評価し、それを組織に定着させることです。成果評価では、KPI(重要業績評価指標)を基準に、改善前後のパフォーマンスを比較します。単にコスト削減額や処理時間短縮といった定量的な効果だけでなく、社員のモチベーションや顧客満足度の向上といった定性的な効果も重要です。

そして、その成功事例を組織全体で共有し、次の改善活動へとつなげる仕組みを作ることが必要です。さらに、改善策を一度きりで終わらせず、PDCAサイクルや継続的改善の文化を根付かせることで、長期的な競争力を維持できます。

場合によっては、改善で得られた知見をマニュアル化して新入社員教育に組み込むなど、次世代の業務基盤づくりに役立てる視点も重要です。

成功事例から学ぶ業務プロセス改善のポイント

業務プロセス改善は「理論」や「手法」の理解だけでは不十分で、実際の成功事例から学ぶことが大きなヒントになります。他社の取り組みを知ることで、自社の課題解決に応用できる発想が得られるからです。ここでは、製造業とサービス業それぞれの具体的な改善事例を紹介し、実際にどのように効果を出したのかを見ていきます。

製造業における生産性向上事例

製造業では生産ラインにおける「ムダの削減」が業務プロセス改善の王道です。例えば、トヨタ自動車の生産方式(トヨタ生産方式:TPS)は世界的に有名で、「ジャストインタイム」と「ニンベンのついた自働化」により効率化と生産性向上を実現しています(出典:トヨタ自動車公式サイト)。

このTPSは、在庫を極限まで減らし、必要なものを必要なときに必要な分だけ供給する仕組みにより、生産性向上とコスト削減を両立させた代表的な事例です。

また、ソニーグループでも「工程内品質保証」を重視しており、「商品企画」から「設計」「試作」「評価」「量産」まで一貫した品質管理を行っています(出典:ソニーセミコンダクタソリューションズ公式サイト )。

さらにソニーセミコンダクタマニュファクチャリング社では、AI分析ツール「Prediction One」を活用し、製造初期工程における不良要因を予測・分析することで歩留まり改善に成功しました。決定係数が0.19から0.64に向上し、生産効率全体の最適化につながったと報告されています(出典:スマートファクトリー最前線~半導体製造プロセス改革への取り組み~) 。

製造業での成功事例から学べるのは、TPSに代表されるような「ムダの徹底的排除」と、ソニーのような「データ駆動型の品質保証」が、ともに長期的な生産性向上の要となるという点です。どちらも現場を巻き込みつつ改善文化を育てることで、効率性と品質の両立を実現しています。

サービス業における顧客満足度向上事例

サービス業では「お客様の体験価値」が最大の評価基準になります。日本国内でも、いくつもの改善事例が公開されています。

まず、KDDIは2024年3月7日付のニュースリリースで、LINE「auサポート」のチャットボットに生成AIを活用し、事前検証にて従来比で約5分(約2割)短縮の事例を確認したと発表しました。問い合わせ解決までの時間短縮を顧客体験向上につなげる狙いが示されています(出典:au、チャットボット問い合わせ対応に生成AIを活用開始)。

次に、星野リゾートでは都市型ホテルブランド「OMO」に自動チェックイン機を内製導入した事例を公式Noteで公開しています。予約システム・会計システム・ホテルシステムのそれぞれを連携し、非接触でスムーズなチェックインを実現する仕組みを整備しました。現場負荷を軽減しつつゲスト体験を高める取り組みです(出典:3施設同時開業!でも開発期間は3ヶ月。内製化の底力で爆速開発をしたお話)。

加えて、すかいらーくホールディングスでは、デジタルメニューブックや客数予測に基づく人員配置表の自動作成、配膳ロボット導入といったDXの取り組みを行っています。これらの取り組みは、生産性と接客品質の両立に寄与しています(出典:すかいらーくグループにおけるDX推進)。

日本国内のサービス業事例から学べるのは、「顧客接点の時短・ストレス低減(KDDI)」「フロント業務の非接触・省人化(星野リゾート)」「現場の生産性向上と体験価値の両立(すかいらーく)」という複数のアプローチが、相乗的に顧客満足度を底上げしている点です。

業務プロセスの改善活動を定着させるための仕組み

業務プロセスの改善は、一度施策を導入すれば終わりではなく、継続的に運用し、組織の文化として根付かせることが重要です。せっかく改善を実施しても、日々の業務に埋もれて忘れられてしまえば、効果は一過性のものに終わってしまいます。

そのため、改善を組織全体で持続させるための「仕組み化」が必要となります。ここでは、KPI・モニタリング体制の整備と、改善文化の醸成について解説します。

KPI・モニタリング体制の整備

改善活動を定着させるためには、まず客観的に成果を測定できる仕組みが不可欠です。その中心となるのがKPI(重要業績評価指標)の設定です。KPIを明確に設定することで、改善活動が実際に成果を生んでいるのかどうかを数字で確認でき、組織全体で共通の目標を持つことができます。例えば「処理時間の短縮率」「エラー発生件数の減少」「顧客満足度スコアの上昇」などが代表的なKPIです。

さらに重要なのは、これらのKPIをモニタリングする仕組みを日常業務に組み込むことです。ダッシュボードやレポートを活用し、進捗をリアルタイムで確認できるようにすることで、現場の社員も改善状況を常に意識できます。特に最近ではBIツールやクラウド型の分析基盤を活用することで、専門知識がなくても直感的にデータを理解できる環境が整いつつあります。

また、「ネガティブな兆候を早期に把握する仕組み」を整えることも大切です。多くの場合、改善がうまくいっていないサインは小さな不満や現場の声として現れます。これを収集する仕組みを設けることで、単に数字を追うだけでなく、潜在的なリスクを早期に修正できるようになります。

つまり、定量的な指標と定性的なフィードバックの両方を設けることが、モニタリング体制の質を高める鍵となります。

改善文化の醸成|表彰・共有制度

仕組みとしてのモニタリングだけでは、改善活動を長期的に続けるモチベーションを維持することは難しい場合があります。そこで重要になるのが「改善文化の醸成」です。これは、改善を単なる業務の一環ではなく、社員一人ひとりが主体的に取り組む価値ある活動だと認識させる取り組みです。

具体的には、改善提案を積極的に出した社員やチームを表彰する制度を設けることが有効です。評価されることで「改善すれば認められる」という成功体験が蓄積され、組織内に前向きなサイクルが生まれます。

また、成功事例を全社的に共有することも大切です。他部署の成功体験を知ることで、自分の業務に応用できるヒントを得たり、改善活動が組織全体の成果につながっていることを実感できたりします。

さらに、改善文化を根付かせるうえで見逃せないのが「失敗の扱い方」です。多くの企業では失敗を避ける傾向がありますが、改善活動は試行錯誤を前提としています。失敗を責めるのではなく、そこから学びを引き出し、ナレッジとして共有する姿勢を組織が持つことが重要です。むしろ失敗を積極的に共有することで、同じ過ちを繰り返さず、全体の改善スピードを高めることができます。

このように、KPIやモニタリング体制による「仕組み」と、表彰・共有制度による「文化」の両輪を整えることで、業務プロセス改善は一過性の施策ではなく、組織の競争力を持続的に高める基盤となります。

まとめ|業務プロセスは小さな改善から始めよう

業務プロセス改善は、単なる業務効率化にとどまらず、企業の競争力を高め、持続的な成長を支えるための戦略的な取り組みです。

本記事で紹介したように、改善は現状分析から課題抽出、解決策の設計と実行、そして成果の評価と定着化までの一連のプロセスを繰り返すことに意味があります。大切なのは、改善を一度の取り組みで終わらせるのではなく、KPIやモニタリング体制を整備し、継続的な仕組みとして組織に根付かせることです。

その効果はコスト削減や生産性向上といった数値で表せる成果だけではありません。品質改善や顧客満足度の向上、さらには従業員が働きやすい環境の整備など、人や組織に関わる定性的な価値も大きな意味を持ちます。

特に現場の声を取り入れ、改善に反映させる仕組みを作ることで、社員のモチベーションやエンゲージメントが高まり、離職率の低下や新たなアイデアの創出といった波及効果を生むこともあります。これは数値化しづらい一方で、長期的な企業競争力を支える大きな要素です。

業務プロセス改善は大規模な改革から始める必要はありません。まずは身近な課題を一つ解決することから始めましょう。その小さな成功体験が組織に自信を与え、次の大きな改善へとつながっていきます。

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この記事を書いた人
スマート書記ブログチーム

エピックベース株式会社が運営する「スマート書記」のブログ編集部です。議事録や文字起こし、生成AIやAIエージェントに関するノウハウなど、企業が業務効率化を実現し、さらにはDXを推進するための情報をお届けします。

よくある質問とその回答

Q. 改善プロジェクトが失敗する主な原因は何ですか?

主な原因は、目的が曖昧なまま進めてしまうことです。「効率化したい」といった抽象的な目標では具体策が定まらず、現場に定着しません。また、現場の理解や協力が得られないと新しい仕組みが形骸化し、元に戻ってしまうこともあります。

改善を一度で終わらせてしまうことや成果測定がないことも失敗要因です。さらに、改善が「仕事を奪うのでは」という不安を生み、抵抗を招くケースもあるため、意図をしっかり伝えることが成功の鍵です。

Q. ITツール導入だけで改善は成功しますか?

ツール導入は有効ですが、それだけでは成功しません。現状のプロセスを整理しないまま自動化しても非効率が残りますし、現場の教育やサポートが不足すると活用されません。ツールは目的ではなく手段であり、狙いは業務の質と生産性の向上です。また、ツールがかえって新たなボトルネックになることもあるため、試験導入や現場の意見を反映することが重要です。

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