DX

DXの成功事例21選を業界・規模別で紹介!成功の共通点についても分かりやすく解説

DXの事例を紹介

「DXを進めたいけど、どのように取り組めばいいか分からない」「参考になるような事例を確認しながら自社の取り組みに活かしていきたい」とお悩みの方も多いと思います。

2018年に経済産業省がDXレポートを発行したことがきっかけで、DXという言葉は日本に浸透し、様々な取り組みが実施されるようになりました。ただまだまだ日本におけるDXは課題が多いというのも実情です。

そこで本記事ではDXを進めるためにも参考となるDXの事例をご紹介します。同業種や同業界の事例を確認しながら、今後のDXを進めるための参考にしてください。

また社内のDX推進をお考えの方は、ぜひ一度議事録作成時間を削減できるスマート書記をお試しください。スマート書記は機密情報を学習させることなく、使えば使うほどAIの精度が上がるため、大幅に議事録の作成時間を削減することができます。

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DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「データとデジタル技術を活用して、会社を変革し競争上の優位性を確立する(ビジネスで生き残ること)」の取り組みを意味しています。

経済産業省が企業のDXに関する取り組みを促すために策定した「デジタルガバナンス・コード」では以下のようにDXが定義されています。

DXの定義は次のとおりとする。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

出典:経済産業省『デジタルガバナンス・コード3.0』p.2

DXの定義についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。

参考記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?押さえておきたい3つの用語も解説

DXとIT化の違いとは

まず、IT化は、既存業務を効率化・自動化することを目的としており、たとえば「紙の書類をデジタル化する」など、部分的な改善が中心です。一方で、DXは単なる業務効率化にとどまらず、企業のビジネスモデルや価値提供プロセスそのものを革新し、競争優位性を生み出す取り組みとされています。

次に、ビジネスモデルへの影響度が異なります。IT化では既存の業務プロセスが改善されるものの、ビジネスモデル自体は変わりません。しかし、DXは新たな製品・サービスを生み出したり、既存のビジネスモデルを大きく変革したりするため、企業のあり方そのものを再構築する力を持ちます。

さらに、経営戦略との結びつきも重要なポイントです。IT化は現場レベルでの効率化が中心で、経営戦略との直接的な関係性は薄いですが、DXは経営陣のリーダーシップが求められる全社的な取り組みです。

要するに、IT化は「現場の効率化」、DXは「企業全体の変革」を目的とする点で根本的に異なると説明されています。

参考記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とIT化の違いとは?3つのポイントで解説

DXに取り組む企業が直面する4つの課題

DXの成功事例をご紹介する前に、そもそもDXに取り組んでいる企業はどんな課題に直面するのでしょうか。ここではDXに取り組んでいるが、成果が出ていない企業に焦点を当て、成果が出ていない企業の実態を解説します。

より詳しく成果が出ている企業と出ていない企業でどれくらい数値的な差があるのかなど、より詳しく知りたい方は以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

参考記事:DXの課題とは?DXの推進状況・成果別にみる課題を徹底解説

1. DX・ITに知見のある人材がいない

ただデジタル技術を導入するだけでは、DXを成功させることはできません。DXを進める上ではDXによって何を実現したいのか、具体的にどこから着手するのかなどのDXの戦略を策定する人材、実行する人材が必要不可欠ですが、DXに取り組んでいるが成果が出ていない企業はこのDX人材が不足しています。

DXの成功のためには、経営層が自ら変革を主導して全社でDXに取り組む必要があります。DXはデータやデジタル技術を活用するため、特にIT分野に知見がある役員がいたほうが、DXは進みやすいですが、IT分野に知見のある役員がいない企業のほうがDXを進めるうえで成果が出づらいという傾向があります。

2. データを上手く活用できていない

データを上手く活用できている企業と活用できていない企業を比較しても、データを上手く活用できる企業のほうがDXの成果が出る傾向があります。

データを活用するうえで、データ活用の基盤が整っていることが重要です。ただデータ活用ができるツールを導入するだけでは上手くいかず、そもそもデータを活用するという組織文化が重要になります。

3. 人材の育成予算を獲得できていない

DX人材の育成予算の確保ができている企業のほうが、DXを進めるうえで成果が出る傾向があります。成果が出ている企業は育成予算を確保し、また次年度の予算計画でも育成予算を増やしています。

DXを進めるためには幅広いスキルが求められます。そのためDX人材を獲得するだけでは、DXの実現は難しく、中長期的な視点で育成をしていく必要があります。

4. 求めるDXを推進する人材の設定があいまいになっている

DXで成果が出ていない企業は、成果が出ている企業に比べて、DXを推進する人材像を設定していない割合が高くなっています。

求める人材像が設定できれなければ、そもそも育成予算の確保も難しいため、予算を確保するためにも、まずは自社にとってどんな人材が必要かを明らかにするようにしましょう。

DXを進めるためには具体的にどんな人材が必要なのか、どんなスキルが必要なのかとさらに詳しく知りたい方は以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。

参考記事:DX人材とは?求められるスキル・マインドを徹底解説

業種別成功事例5選|製造業

ここからは、実際にDXに成功した製造業の事例を、大企業・中小企業に分けて5つご紹介します。

大企業の事例2選

1. 日産自動車株式会社

日産自動車株式会社は、栃木工場を舞台に「ニッサン インテリジェント ファクトリー」という新たな自動車製造の取り組みを進めています。コロナ禍と深刻な人手不足、さらにCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の進展に対応し、高精度・高品質な量産体制の確立を目指してDXに取り組んでいます。

具体的には、まずロボットによるCPM(コックピットモジュール)の自動組付けに取り組んでおり、±0.05 mm単位で位置を補正しながら高精度での設置を実現しています。続いて、塗装およびキズの統合自動検査では、11台のロボットが約6,000箇所をチェックし、直径0.3 mmの欠陥を100%検出可能な体制を構築しています。さらに、IoTセンサーとロボットによる連携で遠隔設備メンテナンスを実現し、設備故障時の復旧時間を30%短縮する成果も上げています

これらの投資により、日産は300億円規模の導入を行い、匠の技を継承しつつロボットと共存する仕組みを構築。次世代の自動車製造における品質維持と効率化を両立しています。

出典:日産自動車株式会社『ニッサンインテリジェントファクトリー

2. パナソニックホールディングス株式会社

パナソニックグループは、従来の情報システム依存や部門ごとの個別最適化といった課題を背景に、経営・業務・文化の変革を目的としたDXプロジェクト「PX(Panasonic Transformation)」を推進しています。単なるIT刷新ではなく、経営判断の迅速化と企業価値向上を目指す全社的な取り組みです。

具体的には、グループ各社の経営者が署名した「PX:7つの原則」のもと、プロセスの簡素化、データドリブン経営、人材と文化の醸成を進めています。ビジネスプロセス改革ではプロセスオーナー制を導入し、責任と改善活動を明確化。SCM領域では実需データ連携により流通在庫を20%以上削減しながら即納率99%を維持するなど成果を上げています。

製造現場ではERPの導入による間接業務の効率化やロス削減、調達業務では汎用部品推奨システムの活用、人事領域ではAIチャットボット導入による問合せ対応の効率化とコスト削減を実現しています。また、社内AIアシスタント「PX-AI(旧PX-GPT)」を約18万人の社員に展開し、DX推進人材であるPXアンバサダーや現場事例コンテストを通じて現場主体の変革も促しています。

これらの取り組みは高く評価され、同社はIT Japan Award 2023でグランプリを受賞しています。

出典:パナソニックホールディングス『DXの取り組み

中小企業の事例3選

1. Jマテ.カッパープロダクツ株式会社

Jマテ.カッパープロダクツ株式会社は新潟県上越市で非鉄金属製品製造業を展開している企業です。地方での労働生産人口減少に対する危機感、働き方改革や労働環境改善への対応のためにDXに取り組んでいます。

スモールスタートとアジャイル開発による柔軟な仕組み作り、デジタルスキル向上による組織強化、 データ分析とAI技術の活用による意思決定の高度化を狙い、実際にRPAによる業務自動化で年間累計3000時間の業務削減を達成しています。

またその他にもダッシュボード導入による生産性37%向上やDX認定取得後から年18件のメディア掲載による企業ブランドの向上も実現できています。

出典:経済産業省『DX Selection 2024

2. 協和工業株式会社

協和工業株式会社は愛知県大府市でユニバーサルジョイント製造販売を展開している企業です。基幹システムが陳腐化し、システム外で各社員が個別に情報管理をし始めた事で、業務の属人化、情報の非共有化が進み、問い合わせなどの価値を生まない作業がまん延していたことがきっかけでDXに取り組んでいます。

システム内製化を目指し全体最適化を理解しプログラミングできる人材の育成を実施したことで、時間当たり売上高 13.5%増と工程内不良金額 86.4%減を実現しています。

出典:経済産業省『DX Selection 2024

3. 株式会社リノメタル

株式会社リノメタルは埼玉県八潮市で金属プレス加工・熱処理加工による機能部品の量産などの事業を展開している企業です。「既存顧客への柔軟な対応」や「新規顧客開拓」実現のため、生産管理業務において「ミス・ムダ・属人化」からの脱却、 製造以外の事務における「業務の非効率さ」「伝達・連絡ミス」「ノウハウ・データの属人化」を改善するためにDXに取り組んでいます。

具体的にはアドラー心理学を活用した仕組みづくりを行うことでチームビルディングを促進、 5年間で28個のクラウドサービスを導入、製造現場においては「ものづくり補助金」も活用しながら1億円近くの投資を行って、生産管理システムを導入と、多くの変革を実行しています。

結果、全社的に「業務効率化、ノウハウ蓄積、情報一元管理、コミュニケーション・コンプライアンス・セキュリティレベルの向上」が前進し、生産性管理業務では月間268時間の削減に成功しています。

出典:経済産業省『DX Selection 2024

業種別成功事例4選|小売業

DXに成功した小売業の事例を、大企業・中小企業に分けて4つご紹介します。

大企業の事例2選

1. 株式会社ローソン

株式会社ローソンは、店舗ごとに異なる顧客行動や売場の特性に応じたきめ細かな売場展開を図るため、日本マイクロソフトと連携し、AIやデータ活用による店舗のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。

2021年11月から2022年3月にかけて、神奈川県内の4店舗を対象に、カメラや音声センサーを使って「通過人数」や「滞留時間」「棚への接触時間」「購入率」といった顧客行動データを、POSや会員データと匿名化した形で統合し、Microsoft Azure上の「店舗運営支援AI」で分析・可視化する実験を実施しました。

これにより、データに基づいた棚割や販促物の最適化が可能となり、売場改善や利益向上につなげる仕組みを試行し、SV(スーパーバイザー)による店舗指導にも活用できる体制を整えています。

そしてローソンは、本実験の成果を踏まえて「店舗運営支援AI」の全国展開に向けた展望を描き、店舗運営の自律化と業務効率化を目指すべくDXを推進しています。

出典:株式会社ローソン『<参考資料>ローソンと日本マイクロソフト、AIやデータを活用した店舗のデジタルトランスフォーメーションにおいて協業

2. 株式会社ビックカメラ

株式会社ビックカメラは日本国内で家電量販を展開する大手企業で、店舗とEC双方の顧客接点を強化し、データ駆動型経営を実現するためにDXに本格的に取り組んでいます。

基幹システムをはじめとした主要な情報システムをAWSへ移行することにより、クラウド上での柔軟かつ迅速な環境構築が可能になりました。同時に、社内でDX推進をリードするIT戦略子会社を設立し、さらに人材育成や脱炭素推進を踏まえたクラウド移行支援プログラム「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ2.0」を活用して

Culture of Excellence(CoE)を立ち上げるなど、組織横断的な仕組みも整備しています。

これにより、顧客との接点を一元的に管理・分析する基盤が構築され、新規店舗の開設や店舗リニューアル時にもシステム構築が迅速に進む柔軟性とコスト効率が向上しました。こうした取り組みは、ビックカメラのDXを支える基盤となり、今後のさらなる業務効率化と顧客体験の深化に寄与するものと期待されます。

出典:AWS『”新しい顧客体験”の創出に向けて ビジネスを再構築 DX を加速するビックカメラのビジョン

中小企業の事例2選

1. 株式会社スリジエル

株式会社スリジエルは東京都文京区で洋菓子の製造・販売事業を展開している企業です。繁忙期には通常の1.3倍を超える来店客が訪れる人気店である一方、予約業務の負担や店舗の混雑対応といった課題を抱えていました。特に予約受注業務では、1件あたり5〜10分かかるアナログ対応がスタッフの大きな負担となっており、業務の属人化や非効率さが生じていました。こうした課題を解決し、「業務効率化」と「顧客満足度の向上」の両立を目指して、DXに取り組んでいます。

具体的には、予約受注業務の100%オンライン化を推進。予約・決済・本人確認までを一貫してデジタル化することで、店頭業務の効率化と接触機会の削減を実現しました。さらに、予約内容の明確化により、受注ミスや食品ロスも削減され、繁忙期でも安定した販売体制を構築。こうした変革により、スタッフは製造支援などの本来業務に集中できるようになりました。

結果として、全社的に「業務効率化、食品ロスの削減、情報の明示化、コミュニケーションと顧客対応品質の向上」が実現され、クリスマスケーキの廃棄ゼロや予約業務の簡素化といった定量的な成果も上がっています。今後は既存ECサイトとの連携によるさらなる販路拡大と、オンライン体制の改善にも取り組む予定です。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.21 株式会社スリジエル ~オンライン予約決済システムの導入で販路拡大、業務効率化、食品ロスも削減~

2. 株式会社伊場仙

株式会社伊場仙は東京都中央区日本橋で団扇・扇子などの伝統和紙製品の製造販売を行っている創業400年を超える老舗企業です。コロナ禍による事業環境の変化を受け、「業務継続性の確保」「販路拡大」「情報発信力の強化」を目的にDXに取り組んでいます。

具体的には、営業職へのテレワーク環境の整備、InstagramやXなどSNSを活用した情報発信、ものづくり補助金を活用した越境ECサイトの構築などを実行。結果として、オンラインショップ売上は約10%増加し、SNS投稿をきっかけに店舗来客数も上昇。売上全体もコロナ前を上回る水準となっています。

さらに、今後はメタバース上での浮世絵美術館の開設や、NFTの活用など、伝統と革新を融合した新たな挑戦にも取り組んでいます。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.27 株式会社伊場仙 ~積極的に補助金を活用して越境ECサイトを構築。SNSでの発信も強化し売上増加~

業種別成功事例4選|建設・不動産業

DXに成功した不動産業の事例を、大企業・中小企業に分けて4つご紹介します。

大企業の事例2選

1. 竹中工務店

株式会社竹中工務店は大阪を拠点に400年以上の歴史を誇る建設の専門企業です。技能労働者の高齢化や労働生産性のほとんど横ばいという建設業界の構造的な課題に直面し、DXによる変革を加速させています。そこで同社は、業務のデータ利活用を支える「建設デジタルプラットフォーム」をAWS(クラウド)上に構築し、2021年11月から運用を開始しました。

このプラットフォームは、営業や設計、施工管理、人事・経理などにまたがる多種多様な業務データを一元的に統合し、AI・BI・IoTを組み込んでデータの可視化や予測分析を可能としています。その成果として、構造設計のシミュレーションや施工に必要な人員数のモデル予測といった実務への応用につながりました。

さらに、協力会社との間で建設資材の搬入状況をIoTで共有し、BIM(建築情報モデリング)との連携による施工のデジタルツイン化も推進。施設運用やまちづくりに至るまで、社会との新たな価値創出を目指しています。

今後は「建設デジタルプラットフォーム」とスマートビル管理の「ビルコミ®」、建設ロボットプラットフォームなどと連携を深め、地域社会や異業種とのデータ連携によって「まちづくり総合エンジニアリング企業」としての深化を図る計画です。

出典:竹中工務店『「建設デジタルプラットフォーム」の構築によるデジタル変革の取組み

2. 鹿島建設株式会社

鹿島建設株式会社は建設業界が抱える担い手不足や業務の複雑化に直面し、「鹿島DX」と名付けたデジタル変革に取り組んでいます。

社長直轄のデジタル推進室を設置し、組織横断での連携体制を構築してきました。まずはDXの第一フェーズとして、全社の基盤を変える「業務DX」と建設プロセスを変革する「建設DX」を実行し、続いて蓄積されたデジタルと建設技術を融合させた、新たな価値創出の「事業DX」へと進めています。

さらに、全社員のデジタルリテラシーを高めつつ、多様な人材を取り込み、スタートアップなど外部リソースとも協働しながら、現場の“スモールスタート”を促す文化づくりにも注力しています。

これにより鹿島建設は、デジタルを中核に据えながら働き方や組織風土そのものを変革し、「100年先も社会に求められる企業」としての未来を描いています。

出典:鹿島建設『DXの戦略的推進

中小企業の事例2選

1. 株式会社トーシンパートナーズホールディングス

株式会社トーシンパートナーズホールディングスは東京都武蔵野市でマンションの企画・開発・販売、不動産売買・仲介、賃貸などを展開している企業です。継続的に成長できる企業へと邁進していくために、DXによるデジタル技術とデータの活用が急務、かつ必須と捉え、本格的にDXの推進を開始しています。

2021年11月に情報システム部内にDX推進組織を設置したり、社内研修など社員のDXスキル向上に向けた施策を推進するなど、社内の体制の変革を行っています。またAIを活用した早期賃貸付けプロジェクトを始動し、賃貸募集時における適正賃料生成モデルを作成するといった新しい取り組みも実施しています。

結果グループ全社の業務効率化によって年間約8,800時間の工数削減を実現しています。また独自アプリの開発とIoT技術との連携によって、顧客サポートの活性化も推進しています。

出典:経済産業省『DX Selection 2024

2. 有限会社すずらんホームズ

有限会社すずらんホームズは、板橋区で22年にわたり住宅リフォームを手がける企業で、代表・菊地広樹氏と妻の博子氏が現場と営業・経理を担う少人数体制です。近年では業務量の増加と人手不足が深刻な経営課題となり、DXによる改革へと動き出しました。

具体的には、東京都の「中小企業活力向上プロジェクトネクスト」を2020年8月に受診し、翌月から「アシストコース」を活用して事業計画を策定。その後、現場報告書の作成にiPhoneで写真に寸法を書き込める「工事写真メーカー」、iPadでの「Google Notes」を導入し、ペーパーレス化と作業効率の改善を実現。さらに、2020年12月には「クラウド請求書(マネーフォワード)」を導入し、見積書・請求書の作成をオンライン化、バックオフィス業務の効率化にもつなげています。

これにより、業務効率化とペーパーレス化が進み、人手不足の課題にも対応。今後は、会計・勤怠・給与など、手作業中心のバックオフィス業務のさらなる効率化を目指しています。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.22 有限会社すずらんホームズ ~報告書作成のアプリ活用、請求書作成のクラウド活用で業務効率化、人手不足解消~

業種別成功事例4選|運輸・物流業

DXに成功した運輸・物流業の事例を、大企業・中小企業に分けて4つご紹介します。

大企業の事例2選

1. ヤマトホールディングス株式会社

ヤマトホールディングス株式会社は、物流業界の構造変革を見据えた中期経営計画「Oneヤマト2023」に基づき、グループ横断でデジタル戦略を推進しています。組織・業務・事業を一体的に変革する目的のもと、データ・ドリブン経営への転換を中核に据え、基幹システムの刷新とともに、リアルタイムに情報を活用できるデジタル基盤「ヤマトデジタルプラットフォーム(YDP)」を構築しました。

YDP上では、複数サービスから収集したデータを用いて機械学習による3ヶ月先までの業務量予測を実施し、営業所や仕分け拠点、輸送車両の人員配備計画策定に活用することで、安定的で高品質なサービスの提供とオペレーションの効率化を両立させています。また、配送伝票のOCR読み取りによって集配ルートの自動生成を可能にし、バックオフィス業務のデジタル化にも取り組んでいます。

さらに、デジタル人材の育成にも注力し、2022年度より階層別研修による「Yamato Digital Academy(YDA)」を開始し、経営層から現場担当までのデジタルリテラシー向上と人材育成を推進しています。こうした取り組みを通じてヤマトグループは、経営変革とオペレーション革新をデジタルと一体に推進する体制を整備し、社会的価値と業務効率の向上を実現しています。

出典:ヤマトホールディングス『「Oneヤマト2023」の改革を支えるデジタル戦略の推進

2. アマゾンジャパン合同会社

Amazonジャパン合同会社は、政府が掲げる日本の成長戦略の中核としてのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に賛同し、産業界の一員として積極的に取り組んでいます。

特に新型コロナウイルス感染拡大によるライフスタイルと働き方の変化を背景に、DXが経済成長と企業や地域社会の利益に直結する重要な課題として認識されているなか、Amazonは販売事業と顧客双方の安心・安全な環境整備に注力しています。日本国内では中小企業を中心に15万を超える販売事業者様がAmazonのプラットフォームを通じて事業を展開し、1,000万円以上の年間売上を達成した企業も3,000社を超えています。

こうした販売事業者様の成長を支援するために、Amazonは豊富な物流ネットワークや各種ツール、サポート体制を整備し、デジタルを活用した事業拡大やグローバル展開を後押ししています。

また、取引の公平性と透明性の確保にも努め、販売事業者様に対しては規約やポリシーの明確な開示、継続的な情報提供やオンライン講習、個別サポートを実施しています。さらに、販売事業者様からの問い合わせには迅速に対応し、問題発生時には積極的に解決に向けた支援を行うことで信頼関係の強化を図っています。

Amazonはこれらの取り組みを通じて、日本のDX推進に貢献するとともに、中小企業の持続的な成長と地域経済の活性化に寄与することを目指しています。

出典:Amazon『日本の成長の鍵となるデジタルトランスフォーメーション

中小企業の事例2選

1. 浜松倉庫株式会社

浜松倉庫株式会社は静岡県浜松市で倉庫事業、運送事業、駐車場事業などの事業を展開している企業です。2015年から、生産性向上のための将来を見据えた新しい業務の在り方を、若手管理職を中心とした社内プロジェクトで検討していました。

具体的には集中的に社内システムや業務改善の仕組みを学ぶ研修や、 毎月DX推進担当が各営業所を定期訪問することでDX推進をフォローする体制を整えるといった取り組みを実施しています。

デジタルサービスを活用することでデータ入力の時間を1日の業務の80%から5%削減を実現したり、今まで経験と勘をもとに進捗を判断していたものをリアルタイムで進捗を把握できるようにして、生産性を30%向上させています。

出典:経済産業省『DX Selection 2024

2. 八大株式会社

八大株式会社は東京都中央区日本橋で物流事業を展開している企業です。人手不足やアナログ作業の課題解決を目的に、業務効率化とデジタル化を推進しています。具体的には社内ネットワークの整備やチャットツールの導入、ペーパーレス会議の実施など基盤強化を進めました。

さらに、ITPウェブサービスによる車両管理やIT点呼キーパーの活用で現場業務を効率化し、物流業務クラウド「アセンド・ロジ」をベンチャー企業と共同開発。配車や請求、経営レポートなどを一元管理し、データに基づく経営判断を可能にしました。

これらの取り組みで業務効率や経営の見える化が進み、社員の意識も定性的な判断から定量的な判断へと変化しています。今後は自社の成功事例を発信しつつ、ロボットや自動運転など先端技術の活用にも注力する計画です。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.23 八大株式会社 ~車両管理・点呼等のデジタル化や業務クラウドシステムをベンダーと共同開発、業務効率化・経営データの見える化を達成~

業種別成功事例4選|サービス業

DXに成功したサービス業の事例を、大企業・中小企業に分けて4つご紹介します。

大企業の事例2選

1. 株式会社オリエンタルランド

株式会社オリエンタルランド(OLC)は、東京ディズニーリゾートを運営する企業として、デジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に推進しています。特に、2022年に新設した「デジタル戦略部」では、テーマパークの体験価値向上を最優先に、デジタル技術を活用した業務改革に取り組んでいます。

同部門は、パークの運営におけるIT施策を集約し、ゲストの満足度向上と感染症対策の強化を図っています。例えば、公式スマートフォンアプリの導入により、アトラクションの待ち時間確認やeチケットの購入、ホテルのチェックインなどの機能を提供し、利便性を向上させています。このアプリは、2022年時点で1200万ダウンロードを達成しました。

また、2024年度には「ディズニー・プレミアアクセス」などの新たなサービスを導入し、ゲストの多様なニーズに応えるとともに、収益の向上にも寄与しています。これらの取り組みにより、ゲストの体験価値を高めるとともに、パークの魅力をさらに向上させることを目指しています。

出典:オリエンタルランド『資本を活用した 中期的なハピネス創造

2. 株式会社ベネッセホールディングス

株式会社ベネッセホールディングスは、教育・生活支援サービスを提供する企業であり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。特に、教育分野では「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」などのサービスを通じて、子どもの学びを支援しています。これらのサービスは、デジタル技術を活用して、個々の子どもの学習状況に合わせたコンテンツを提供し、保護者との連携を強化しています。

また、ベネッセは「進研ゼミ」の教材をデジタル化し、タブレット端末を活用した学習環境を提供しています。これにより、子どもたちは自分のペースで学習を進めることができ、学習効果の向上が期待されています。さらに、保護者向けには、子どもの学習進捗や理解度をリアルタイムで把握できるアプリを提供し、家庭での学習支援を強化しています。

これらの取り組みは、教育の質を向上させるとともに、保護者との信頼関係を築くための重要な手段となっています。ベネッセは、今後もデジタル技術を活用した教育サービスの提供を通じて、子どもたちの成長を支援し、社会に貢献していくことを目指しています。

出典:日経XTECH『ベネッセグループの取り組みに見る DXを成功に導く戦略と組織のあり方

中小企業の事例2選

1. 株式会社イントロダクション

株式会社イントロダクションは東京都新宿区でSES事業やシステム受託開発を行う企業です。「日本で一番ホワイトな会社」を目指し、働きやすさと業務効率の両立に取り組んでいます。自社の食事補助制度に関わる業務の効率化を目的に、既存の管理ツールを刷新し、Google Cloud Platformを用いたWebアプリを自社開発しました。

このアプリは、AIによるOCR機能を搭載し、従業員がレシートを写真で送るだけで申請手続きが完了するため、申請業務の負担を大幅に軽減しています。さらに、LINE連携により利便性を高め、経理の経費処理時間も1時間から約5分に短縮されるなど、バックオフィス業務の効率化に大きく貢献しています。

また、生成AI技術を活用したアプリ開発により、経験の浅い社員でも迅速にシステム構築が可能となりました。AIチャットボットによる体調管理や会議リマインドなど多機能を備え、従業員の業務支援や福利厚生の向上にも寄与しています。現在は、このアプリを「DX‑Touch」として外部提供も開始しており、企業のDX推進に資するソリューションとして期待されています。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.40 株式会社イントロダクション ~社内向けに開発したアプリを外販。生成AIも活用し業務効率化を図る~

2. 株式会社クラダシ

株式会社クラダシは東京都品川区を拠点に、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」を運営するEC事業者です。創業当初から経営の中心にデジタル活用を据え、「攻め」と「守り」の両面のDXを実践しています。

具体的には、2015年2月にECパッケージを用いて「KURADASHI」を立ち上げ、最大97%オフの商品を提供し、売上の一部を社会貢献活動へ寄付する仕組みを構築。その後、業容拡大にともない、ECの基幹システムが追いつかなくなったのを受け、2020年5月にシステムリニューアルと在庫管理システム(WMS)の導入を実行しました。

この改革により、商品管理を従来の週次から日次に移行し、サイト上での商品ページ複製作業を自動化。また、クラウド上で入荷・在庫・出荷指示を一貫管理できるようになり、スタッフは戦略立案や仕入判断など、より付加価値の高い業務に専念可能となりました。

さらに、業務管理の「守り」の部分として、クラウド会計ソフトや電子契約サービス(freee、クラウドサインなど)を導入し、財務・労務・ワークフローの一元管理とペーパーレス化を推進。結果として、累計5万品以上の取扱い実績、EC利用者数23万人超、さらに農林水産大臣賞を含む受賞など、定性的・定量的な成果を両立させています。

出典:東京商工会議所『デジタル活用・DX事例集 vol.11 株式会社クラダシ ~創業当初から経営の核にデジタルを活用、攻めと守りの両面で自社ビジョンの達成に繋げる~

DXが成功している企業の3つの共通点

1. 経営陣がDXの取り組みにコミットしている

DXの成功には経営陣のコミットが必要不可欠です。会社を変革する必要があるため、経営陣がコミットしないとなかなか他の従業員が動いてくれないなどの問題が発生してしまいます。そのため経営陣が主体となって、DXの戦略・実行を遂行していくことが重要になります。

実際にさきほどご紹介した成功事例でも、経営陣自らDXを進めるために育成環境を整えたり、社内体制の変革を図っています。

2. 人材の育成に力を入れている

DXを実現するためにも人材の育成が必要不可欠です。社内の特定の人たちのみでDXを実現するのは難しく、データをどのように現場で活用するかなど、多くの従業員を巻き込んでいく必要があります。

そのため全員がDXを進めるという意識が必要になるため、ただ「意識しましょう」ではなくそもそもDXを意識するための仕組みも必要になってきます。そのためにデジタル技術の紹介や勉強会の開催など、人材の育成に力を入れていく必要があります。

3. デジタル技術の導入だけで終えていない

DXでよくある失敗として、デジタル技術の導入がDXのゴールになってしまい、導入後そのデジタル技術を活用しないまま終わってしまうケースがよくあります。

さきほどご紹介した事例でも、「まずデジタル技術を活用しよう」というきっかけでDXに取り組んでいる企業はなく、業務が属人化している、労働環境を改善したい、人口減少を想定して業務体制を変革するなどデジタル技術の導入が出発点になっていることはありません。

そもそもなぜDXに取り組むのかをしっかりと定めたうえでDXを進めていくことが、成功のポイントになります。

まとめ

DXを進めていくためにも、人材の確保やデータをどのように活用するのかなど様々な課題が存在します。それらを解決していくためにも、まずは自社と同じような課題感を抱えてDXに成功した事例はないのかとヒントを得ることはDXを進めるうえで、とても重要な活動になります。

今回はDXの成功事例を21社ご紹介しましたが、他にもDX銘柄に選定されている企業の事例など、様々な事例の情報にアクセスできるようになりました。

DXを進めていくためにも、しっかりと同業種の事例や共通した課題感を抱えている企業の事例がないかなど、しっかりと情報収集をしていきながらDXを実現させていきましょう。

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スマート書記ブログチーム

エピックベース株式会社が運営する「スマート書記」のブログ編集部です。議事録や文字起こし、生成AIやAIエージェントに関するノウハウなど、企業が業務効率化を実現し、さらにはDXを推進するための情報をお届けします。

よくある質問とその回答

Q. DXはどのような手順で進めるべきでしょうか?

現状、社内でどれだけデジタルプラットフォームが形成されているかにもよりますが、基本的には以下の手順で進めます。

  1. 経営ビジョンの策定 
  2. DX戦略の策定 
  3. 現状の把握、課題の洗い出しと特定
  4. ロードマップの策定 
  5. 実現に向けた社内体制の構築 
  6. DXの実行
  7. DXの実行を評価し改善を繰り返す

さらに具体的な手順、DX化におけるフェーズなどについて知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

参考記事:DXの進め方を7つのステップで解説|3つの気をつけるポイントも紹介

Q. より細分化した業務に絞ったDXの内容について知りたいのですが……

各出典元では、より詳しいDXの内容が掲載されています。また、スマート書記では他にもマーケティングDXや人事DX、業務DX、社内DXについての記事を公開しているので、ぜひそちらも併せてご覧ください。

参考記事:マーケティングDXとは?必要な背景や成功させるためのポイントを解説
人事DXとは?具体的な進め方やよく起きる課題も解説
DXと業務効率化の違いとは?違いや共通点、事例について解説
【2025】社内DXとは?具体的な進め方や事例も解説

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