業務効率化の成功事例|施策別の課題・打ち手・効果と自社で再現する5ステップ
人手不足や働き方改革、生成AIの浸透を背景に、業務効率化を経営テーマに掲げる企業が増えています。
ただ、いざ企画や稟議の準備を始めると、
- 他社が具体的にどんな施策で成果を出したのかを知りたい
- 業種や規模が違う事例ばかりで、自社で再現できるイメージが湧かない
- 事例を集めても、結局どの業務から手をつければよいのかが決まらない
といった悩みにぶつかる方も少なくありません。
成功している企業に共通するのは、全社員が関わる定型業務から着手し、短期間で数値化できる効果を出したうえで全社へ広げている点です。施策はRPAでも工数の可視化でも自治体のDXでも違いますが、「課題を数値で捉える→小さく試す→効果を測る」という順序は変わりません。
そのためこの記事では、業務効率化の成功事例を施策別に出典付きで紹介し、事例から見える4つの共通点、自社で再現する5つのステップ、よくある3つの失敗パターンと対策までを、業務効率化の企画・稟議担当がそのまま使える形で解説します。
業務効率化の企画で最初につまずくのは、「何から着手すれば効果が説明できるか」の判断です。全社員が毎週関わり、削減時間が人数分で積み上がる会議・議事録業務は、効果を数値で示しやすい着手ポイントです。会議業務を丸ごと自動化するAIエージェント「Otolio」は、8,000社以上・59,000人以上の利用実績のもとで、文字起こし・要約・要点整理・共有までを自動化します。まずは自社の会議で試してみて、数値化された削減効果を稟議の材料にしてはいかがでしょうか。
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業務効率化とは?基本定義と生産性向上との違い
業務効率化の基本定義
業務効率化とは、既存の業務プロセスに含まれるムダ・ムラ・重複を取り除き、同じ成果を少ない時間・工数・コストで実現できる状態にする取り組みです。目的は「速く終わらせること」自体ではなく、そこで生まれた時間や人員を、より付加価値の高い業務へ振り向けることにあります。
対象は事務作業やバックオフィス業務にとどまりません。会議・議事録・意思決定プロセスなど、日常的に発生する業務にも広く適用されます。効率化の打ち手には、業務プロセスの見直し、ツール導入、自動化、標準化、外部委託、ペーパーレス化などが含まれます。
生産性向上との違い
生産性向上と業務効率化では、主に焦点を当てる対象が異なります。業務効率化は「同じ成果をより少ない投入で実現する」ことを目指す取り組みです。一方で生産性向上は、投入した資源に対する成果(アウトプット)そのものを大きくする、より広い概念です。
言い換えると、業務効率化は生産性向上を実現するための手段の一つです。無駄な作業を減らして生まれた時間を、企画・提案・顧客対応など成果に直結する業務へ振り向けて初めて、生産性の向上につながります。
業務効率化の3つの目的
業務効率化に取り組む目的は、大きく3つに整理できます。
コスト削減
業務時間・残業・外部委託費・紙・保管スペースなど、業務に付随するコストを直接下げる目的です。効果が数値で表しやすく、稟議で最も通しやすい切り口です。
労働環境の改善
残業の抑制、属人化の解消、ミスの削減、心理的負担の軽減など、働く人の環境を整える目的です。定着率や採用力にも影響します。
成長基盤づくり
単純作業を減らして生まれた時間を、企画・提案・顧客対応・新規事業などの付加価値業務に振り向け、事業の伸びしろを広げる目的です。
自社の稟議で最初に語る「なぜやるのか」を、3つの目的のどれに置くかで、選ぶ施策も効果指標も変わります。
業務効率化に使われる主な施策の種類
業務効率化の施策は多岐にわたりますが、代表的なものは次の7種類に整理できます。事例セクションで紹介する各社は、いずれもこの表のどこかに位置します。
| 施策の種類 | 主な対象業務 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 定型業務の自動化(RPA) | 申請処理・データ入力・帳票作成など、手順が決まったPC作業 | ソフトウェアロボットに作業を置き換える |
| 業務時間・工数の可視化 | 誰が何にどれだけ時間を使っているか | タスク単位で記録し、改善対象を特定する |
| 申請・承認のペーパーレス化 | 紙とハンコで回していた申請・稟議・回覧 | ワークフローシステムに移し、承認と保管を速くする |
| 現場業務のデジタル化 | 紙帳票・目視点検・押印運用など現場に残る紙作業 | タブレット・電子帳票に置き換える |
| バックオフィスの自動化 | 経理・人事・総務など間接部門の業務 | システムを連携し、二重入力と照合作業をなくす |
| 自治体・公共のDX | 住民向けの手続と役所内の業務 | 手続をオンライン化し、内部業務をシステム化する |
| 会議・議事録業務の効率化 | 会議の準備から議事録の作成・共有まで | AIの文字起こし・要約・要点抽出を活用する |
事例をただ読み流すのではなく、「自社の課題はどの施策に近いか」を表で当たりをつけてから読むと、後半の「再現する5ステップ」との接続がスムーズになります。
DXの一歩目をどこに置くかで悩んでいる方は、次の記事も参考になります。
参考記事:なぜDXは失敗するのか?成功する「はじめの一歩」の選び方と議事録DXが最適解である理由
業務効率化が注目される3つの背景
業務効率化は昔からある経営テーマですが、ここ数年で優先度が一段上がっています。人手不足・働き方改革・生成AIという3つの流れが重なったためです。
1. 人手不足の深刻化と労働力確保の難しさ
生産年齢人口の減少と、業界を問わない採用難が続いています。新たな人員を採用して業務量に対応する従来型のやり方は、多くの企業で成立しにくくなりました。
今いる人員のまま業務を回し、なおかつ成果を伸ばすには、既存業務のムダを削って「同じ人数でこれまでより多くの成果を出せる状態」を作る必要があります。業務効率化は、採用難に対応するための有力な施策の一つです。
2. 働き方改革とハイブリッドワークの定着
法改正による労働時間の上限規制、テレワーク・ハイブリッドワークの定着により、「時間の使い方」を組織全体で可視化する必要が高まりました。オフィスに集まって働く前提が崩れた分、誰が何にどれだけ時間を使っているのかが見えにくくなりました。
どの業務がボトルネックになっているかも、データで捉えなければ改善できません。工数の可視化やペーパーレス化は、この文脈で導入が進んでいます。
3. 生成AI・DXの加速によるやり方そのものの変革
生成AIや業務系SaaSの進化により、これまで「人がやるしかない」と考えられていた業務が自動化できるようになりました。議事録作成、要約、資料の下書き、問い合わせ対応など、扱える範囲が急速に広がっています。
ここで足踏みすると、同業他社との差が単なる効率差ではなく、事業スピードそのものの差として現れます。業務効率化は、DXの入口であり、事業の競争力を維持するうえで、重要性の高いテーマになっています。
会議に関わる業務を自動で実行するAIエージェント「Otolio」が実施した250件以上の導入企業アンケートでも、同じ傾向が見られます。業務効率化に踏み出せない理由として「何から着手すべきか判断できない」「効果を数値で示せる自信がない」という声が繰り返し挙がっています。背景の重さと着手のしにくさが、多くの企業で同時に起きている状態です。
業務効率化の成功事例|施策別の課題・打ち手・効果
業種・規模も施策も異なる企業・自治体の事例を、出典付きで4つ紹介します。各事例は「業種・規模/導入前の課題/実施した打ち手/効果/再現のポイント」の5段で整理しました。自社に近い事例の「再現のポイント」を手元に置いておくと、後半の5ステップとの接続がスムーズです。
なお、本稿では出典が公表資料・公式導入事例ページで確認できた事例のみを掲載しています。企業名や数値は各社の公開情報どおりに引用し、丸め直しは行っていません。
1. 定型業務の自動化(RPA)|JCアカウンティング
業種・規模
会計・記帳代行を中心とするアウトソーシングサービス業。約300社の顧問先の月次会計処理を担当しています。
導入前の課題
300社分の月次業務は、それぞれの顧問先ごとにデータ取り込みや資料作成の手順が微妙に異なり、担当者の手作業に依存していました。作業ボリュームが読みにくく、繁忙期の残業や属人化が慢性的な悩みでした。
実施した打ち手
RPAツール「WinActor」を導入し、顧問先ごとの繰り返し作業をロボットで自動化しました。現場の業務知識を生かして対象業務を標準化し、社内でシナリオを修正・展開できる体制づくりを進めました。
効果
源泉納付書に関する対象業務で、月約75時間、年間約900時間を削減しました。
再現のポイント
数百社・数千件の類似作業を抱える業種では、1社あたりの時間は短くても、掛け算で大きな効果が出ます。まずは全顧客・全案件に共通して発生する「型が決まった作業」から自動化対象を絞り込み、現場が触れる仕組みで運用に乗せることが再現の鍵です。
参照:JCアカウンティング | 「無くなる仕事」の効率化によりデジタル・デザインの視点を醸成、「無くならない仕事」を強くする | WinActor NTTデータ
2. 定型業務の自動化(RPA・大規模)|讀賣テレビ放送
業種・規模
関西を拠点とする準キー局の放送事業者。番組制作から広告・営業・管理まで、幅広い業務領域を持つ大規模組織です。
導入前の課題
データ放送のアクセスログ集計、勤怠に関する注意喚起メール、収支明細の集計など、部門横断で「人が繰り返している作業」が多く、担当者の残業と属人化を招いていました。放送事業特有の即時性が求められる業務も多く、単純作業に時間を割かれることが番組品質・企画時間の圧迫要因になっていました。
実施した打ち手
RPAツール「WinActor」を導入し、WinActorに精通した派遣スタッフがシナリオ作成を担い、社内の働き方改革推進部門が対象業務の選定や展開を進めました。単発の自動化ではなく、働き方改革の一環として全社横断で対象業務を積み上げていきました。
効果
導入した各種RPAシナリオ全体で、年間2,000数百時間規模の作業を削減しました。
再現のポイント
大規模組織では「1つの巨大な自動化」ではなく、部門ごとに小さな自動化を積み上げて年間削減時間を稼ぐ設計が有効です。同時に、社内で作って社内で育てる体制を用意しておかないと、開発が止まった瞬間に効果もそこで止まります。人・体制と一体で計画することが再現の条件です。
参照:WinActor®導入事例【讀賣テレビ放送株式会社】年2,000数百時間の作業を削減。WinActorに精通した派遣スタッフと取り組む「働き方改革」 | WinActor NTTデータ
3. 自治体・公共のDX|宮崎県都城市
業種・規模
宮崎県都城市。人口約16万人の市で、南九州の広域交流拠点都市としてまちづくりを進めています。
導入前の課題
住民が窓口に来て紙で申請する運用が長く続いており、来庁・記入・押印・郵送といった手続にかかる時間が住民負担になっていました。あわせて、庁内の手続処理も紙前提で回っており、業務量の平準化や職員の負担軽減が課題でした。
実施した打ち手
マイナポータルや電子申請システムを活用し、市の手続をオンライン化していきました。対象は特定の手続にとどめず、可能な全手続を洗い出したうえで、種類ごとに順次オンライン化を進めています。
効果
オンライン化可能な2,393手続きについて、2024年12月に予定を前倒しして対応を完了したことを市の公表資料で明らかにしています。
再現のポイント
自治体でも民間でも、「一部の手続だけデジタル化」で止まると、住民・従業員は結局窓口に来続けます。対象手続を全量で洗い出し、順次オンライン化する計画に落として初めて、業務全体の負荷が下がります。全体像を先に描き、順序で並べることが再現の要諦です。
参照:原則として全ての行政手続のオンライン化が完了しました! – 宮崎県都城市ホームページ
4. 業務改善の基盤づくり|キリンホールディングス
業種・規模
飲料・食品を中心に事業展開する大手グループの持株会社。多様な職種と拠点を抱える大規模組織です。
導入前の課題
キリンホールディングスのコーポレートコミュニケーション部IR室では、テレワーク下で各メンバーの業務時間を把握しにくいことが課題になっていました。管理職が状況を把握するにはヒアリングを重ねる必要があり、把握そのものに大きな時間がかかっていました。改善したくても、対象業務や優先度を判断する材料が不足している状態でした。
実施した打ち手
工数計測ツール「TimeCrowd」を導入し、業務時間をタスク単位で記録できる仕組みを整えました。まずは「見える化」に絞って運用を始め、記録された工数データを起点に改善議論を進める運用に切り替えています。
効果
定量的な削減数値は公表されていませんが、テレワーク下でも業務時間をタスク単位で把握できる状態を作り、改善議論の土台を整えたことが公表されています。
再現のポイント
業務効率化はいきなりツール導入や自動化から入りがちですが、「何にどれだけ時間を使っているか」が見えない状態では、そもそも改善対象を選べません。数値目標を掲げる前に、まず可視化に投資して意思決定の材料を揃える順序が、遠回りに見えて最も早い場合があります。
参照:キリンホールディングスが業務改善への第一歩にTimeCrowdを活用 | TimeCrowd Blog
成功事例から見える業務効率化の4つの共通点
業種も規模も施策も違う4社ですが、「効果が出た経緯」には共通する型が4つあります。自社で業務効率化を企画するときの評価軸として使えます。
1. 「全社員が関わる業務」から着手している
RPAで自動化した繰り返し作業、行政手続のオンライン化、工数の可視化は、いずれも一部の担当者だけでなく、多くの社員・住民が毎日・毎月関わる業務です。関わる人数が多い業務ほど、1人あたりの削減時間が小さくても、掛け算で全社の効果として跳ね返ります。
会議・議事録のように全社員が毎週関わる業務は、削減時間がそのまま人数分で積み上がるため、効果を数値で示しやすい着手ポイントです。効率化の一歩目に迷ったら、「関わる人数が多い順」に候補を並べてみるのが実務的です。
2. 効果が短期間で数値化できる施策を選んでいる
「月75時間削減」「年間2,000数百時間削減」「全2,393手続の対応完了」といった数値が事例に添えられているのは偶然ではありません。着手する時点で、効果を数値で語れる施策を選んでいます。数字で語れる施策は稟議も通しやすく、次の投資判断にもつながります。
一方で、「風土改革」「意識改革」のみを目標にすると成果を測りにくく、継続や追加投資の判断が難しくなる場合があります。数値で測れる打ち手から着手し、その成功体験の上で風土や意識を変えていく順序が現実的です。
3. スモールスタート+全社展開のシナリオを設計している
掲載事例の一部では、対象業務を絞って導入し、段階的に適用範囲を広げています。JCアカウンティングは共通作業から自動化を始め、讀賣テレビ放送は部門ごとに積み上げ、都城市も手続単位で順次展開しています。
大切なのは「小さく始めること」だけではなく、「その先の全社展開まで最初に絵を描いておくこと」です。全社展開の条件や判断時期が決まっていないと、試験導入から次の段階へ進めなくなる可能性があります。
業務標準化と全社展開の設計は、次の記事もあわせてご覧ください。
参考記事:業務標準化で生産性をアップ!進め方や成功するためのポイント、メリット・デメリットを解説
4. ツール導入を「現場の課題解決」の手段にとどめている
どの事例でも、解決すべき業務課題を起点に施策が選ばれています。RPAは繰り返し作業を減らすため、電子申請は住民の手続負担を下げるため、工数計測は改善対象を選ぶため、というように、それぞれの現場に具体的な課題が先にあります。
ツールが決まってから「使い道を探す」順序で入ると、現場は「余計な仕事が増えた」と感じ、定着しません。課題を先に言語化し、ツールは課題を解く手段として選ぶ順序が、再現性を高めます。
業務効率化を成功させる5つのステップ
事例で見えた共通点を、自社で動かせる手順に整理すると、次の5つのステップになります。稟議・キックオフ・現場展開のどの場面でも、この順序が「脱線」を防ぐ軸になります。
1. 現状業務の棚卸しと可視化
最初のステップは、部門ごとに「誰が」「何に」「どれくらいの時間を」使っているかを一覧化することです。この可視化が不十分なまま次に進むと、体感で「大変そうな業務」を優先してしまい、本当に大きな効果が出る業務を見落とします。
キリンホールディングスのように、工数計測ツールで一定期間データを取ってから改善議論に入る方法もあれば、既存の勤怠・作業記録を突き合わせて棚卸しする方法もあります。手段より、「事実で判断できる状態を作ってから進む」ことが大切です。
2. 課題の特定と優先順位づけ
棚卸しで見えた業務のなかから、改善する対象を選びます。判断軸は主に3つです。関わる人数が多いか、頻度が高いか、そして削減効果を数値で語れるか。この3つを満たす業務ほど、稟議が通りやすく、成果も出やすくなります。
「気になる業務」を全部並べて総花的に進めると、リソースが分散してどれも中途半端になります。上位3つに絞り込み、まずはそこに投入するリソースを固めます。
3. 改善策の立案と数値目標の設定
対象業務が決まったら、打ち手と数値目標を同時に決めます。「業務時間を月◯◯時間削減」「対象手続の◯割をオンライン化」「回答リードタイムを◯日短縮」のように、後日測れる指標にすることがポイントです。
数値目標がないまま「効率化する」とだけ書いた企画は、実行段階で判断が定まらず、途中で失速しやすくなります。目標は多少荒くてよいので、必ず数字で書きます。
業務効率化の進め方全体を体系的に押さえたい方は、次の記事も参考になります。
参考記事:業務効率化の進め方を5ステップで解説|ツール導入・業務改善の具体的な事例も紹介
4. 適切なツール・施策の選定と試験導入
目標が決まって初めて、ツール・施策の比較検討に入ります。RPA、ワークフロー、電子帳票、AI議事録など、選択肢は多くありますが、「対象業務の課題を解く力があるか」「現場の運用が回るか」「効果を測れるか」の3点で候補を絞ります。
いきなり全社導入せず、部門や業務を絞った試験導入から始めます。試験期間中は、想定した数値目標がどこまで達成できているかを継続的に測り、想定と実態のズレを確認します。
5. 効果測定と継続的な改善サイクル
試験導入で得られたデータをもとに、対象範囲を広げる・別の業務にも横展開する・打ち手を組み合わせる、といった判断を行います。ここまで来て初めて、業務効率化が「点」から「面」に広がります。
一度導入して満足するのではなく、四半期・半期のリズムで効果を測り直し、課題の変化に合わせて打ち手を更新し続けることが、成果を年単位で持続させる条件です。
業務効率化でよくある3つの失敗パターンと対策
業務効率化が途中で失速する企業には、繰り返し現れる3つのパターンがあります。それぞれ回避策とセットで押さえておきます。
1. ツール導入が目的化してしまう
「まずRPAを入れる」「AIを導入する」というように、ツール導入そのものが目的化するパターンです。導入したものの、対応する業務課題が曖昧なため、現場から「これで何が良くなるのか」の声が上がらず、稼働率が伸びません。
対策は、ステップ1〜3を飛ばさないことです。棚卸し・課題特定・数値目標が揃ってからツール選定に入ると、導入後に「何のためにこのツールを使うのか」が現場に共有された状態で運用に入れます。
2. 部分最適にとどまり全社展開できない
一部の部門・一部の業務では効果が出たが、そこから広がらないパターンです。事例で成果を出した企業は例外なく「小さく試して、全社展開する」シナリオを最初から描いています。
対策は、企画段階で「試験導入 → 部門展開 → 全社展開」の3フェーズを時間軸に落として合意しておくことです。試験導入の効果検証項目には、次のフェーズに進む条件(例:業務時間◯%削減が確認できたら次フェーズ)を含めます。
議事録DXの「部分最適から全体最適へ」の考え方は、他の効率化テーマにもそのまま応用できます。
参考記事:議事録DXが失敗する3つの理由と成功する4つの選定基準|部分最適から全体最適へ
3. 現場への説明不足で定着しない
現場に十分な説明のないまま新しい仕組みが降ってきて、「余計な仕事が増えた」と受け止められるパターンです。現場が動かないと、どれだけツールが優れていても効果は出ません。
対策は、企画段階から現場のキーパーソンを巻き込むことです。棚卸し・課題特定の段階から現場の声を取り入れ、試験導入の対象部門も、当事者意識の高いチームから選びます。導入後は成果を数値で共有し、「自分たちの業務がこう変わった」を可視化することで、他部門への横展開の呼び水になります。
会議業務にAIを活用して業務効率化に踏み出した企業の実例として、次の2社の事例が参考になります。いずれも会議・議事録という全社共通の業務から着手し、削減時間を数値で示したうえで他部署に広げていったケースです。
参考記事:最大6時間かかっていた経営会議の議事録作成時間を50%削減!他部署にもOtolioを推進した理由とは
参考記事:専門用語が多い会議の議事録作成時間を90%削減。Web会議ツールとOtolioの文字起こしの違いとは
まとめ|業務効率化は「効果を数値で示せる業務」から始める
業務効率化の成功事例を施策別に見てきました。RPA・自治体DX・工数の可視化と、施策も業種も違いますが、共通しているのは「全社員が関わる定型業務から着手し、短期間で数値化できる効果を出したうえで全社に広げている」という順序です。
業務効率化の成否は、施策の派手さではなく「効果を数値で示せる業務から小さく始めて測る」という順序で決まります。棚卸しで事実を掴み、数値目標を掲げ、試験導入で検証してから展開する。この順序を守れば、大きな脱線は避けられます。
そして、効果を数値で示しやすい着手ポイントの筆頭が、会議・議事録業務です。全社員が毎週関わり、削減時間がそのまま人数分で積み上がるため、稟議に必要な数字を短期間で集められます。事例で紹介した各社の再現のポイントを、自社の一歩目に活かしてみてはいかがでしょうか。
会議業務の効率化そのものの進め方に関心がある方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
参考記事:会議を効率化する方法|4原則と会議タイプ別の進め方・フォロー術を解説
事例と進め方を参考に、自社の課題に合う業務を選び、試験導入と効果測定を進めましょう。会議業務を丸ごと自動化するAIエージェント「Otolio」は、8,000社以上・59,000人以上の利用実績のもとで、文字起こし・要約・要点整理・共有までを一貫して自動化します。14日間の無料期間を活用して、複数の会議で導入前後の作業時間を比較すれば、稟議で費用対効果を説明するための参考データになります。
よくある質問とその回答
Q. 中小企業でも業務効率化の取り組みは可能ですか?
可能です。中小企業はむしろ、意思決定のスピードと現場との距離の近さで大企業より早く動けます。棚卸し・課題特定・小さな試験導入までを短期間で回し、全社員が関わる業務から着手すれば、数十時間規模の削減効果は十分に狙えます。予算・人員の制約があるからこそ、対象業務を1つに絞り、効果を数字で測る運用が有効です。
Q. 業務効率化はどの業務から着手するのが良いですか?
「関わる人数が多い」「頻度が高い」「効果を数値で語れる」の3つを満たす業務が有力な候補です。特に会議・議事録のように、多くの従業員が定期的に関わる可能性がある業務は、削減時間が人数分で積み上がるため、稟議の材料になる数字を短期間で集められます。まずは棚卸しで候補を並べ、3つの条件で採点して、上位1〜3業務に絞り込むところから始めてください。
Q. ツール導入の費用や従業員のITリテラシーが心配です。何から始めれば?
いきなり全社展開を前提とした投資判断をせず、無料枠・試験導入・特定部門からのスモールスタートで始めることをおすすめします。まずは1つの業務・1つのチームで運用してみて、削減時間や現場の受け止めをデータで確認します。そこで想定効果が確認できた段階で、他部門への展開と本格的な投資判断に進めば、社内説明の材料も揃った状態で稟議に臨めます。
Q. 業務効率化の効果はどのくらいの期間で実感できますか?
対象業務にもよりますが、事例で紹介した各社では、試験導入から数か月で数値化できる効果が出ています。RPAのように「同じ作業を高い頻度で繰り返す」領域では、導入後1〜3か月で削減時間が見えやすくなります。工数可視化のように「まずデータを取る」領域では、3〜6か月で改善議論の土台が整うイメージです。着手時点で「いつまでにどの数値を測るか」を決めておくと、成果の実感が早まります。