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議事録作成

取締役会議事録の書き方|会社法第369条準拠の記載例・電子化・10年保管ルール

取締役会の事務局を担当していると、議事録の体裁ひとつでも「これで法的に大丈夫だろうか」と不安になる場面が多いのではないでしょうか。

ただ、

  • 会社法のどの条文を根拠に何を書けばよいのかが整理できていない
  • 経営会議の議事録テンプレートを、そのまま取締役会に流用している
  • 紙保管から電子化したいが、社内に説明する根拠が足りない

といったお悩みを抱える総務・法務のご担当者は少なくありません。

そのためこの記事では、会社法第369条第3項に基づく取締役会議事録の作成義務から、会社法施行規則第101条に基づく主な記載事項・3パターンの記載例・署名押印と電子化のルール・10年保管の運用までを、総務・法務の実務目線でわかりやすく解説します。

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目次

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取締役会議事録とは|会社法上の作成義務と経営会議との違い

取締役会の議事録は、議論の中身そのものに加えて「誰が、何を、どう決めたか」を10年残す文書です。作る理由も、社内の情報共有だけにとどまりません。上場準備を進める企業では、主要な会議体の議事録を残すこと自体が準備項目に入ります。つまり「作るかどうか」を選べない記録です。担当者として迷いを抱えたまま会議に臨むと、議論を聞きながら手元の体裁が気になり、論点を見落とすこともあります。まずは、この文書が法律上どう位置付けられているかを確かめておきましょう。

1. 取締役会議事録の定義(会社法第369条第3項)

取締役会議事録とは、会社法上の機関である取締役会で行われた議事の経過とその結果を記録する法定の文書です。会社法第369条第3項は、取締役会の議事については法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。

ここでいう「法務省令で定めるところ」とは、会社法施行規則第101条のことです。この条文に、議事録に記載すべき項目が具体的に列挙されています。

必要な要件を満たせば、取締役会議事録は書面・電磁的記録のどちらでも作成できます。書面の場合は紙で残し、電磁的記録の場合は電子データとして保管します。

参照:会社法 | e-Gov法令検索

2. 経営会議の議事録との違い|法定会議か任意会議か

取締役会と経営会議は、よく似た会議体に見えます。ですが、法律上の位置付けはまったくの別物です。

たとえば、取締役会は会社法に定められた機関であり、代表取締役などの業務執行取締役は、3か月に1回以上、自己の職務執行状況を取締役会に報告する必要があります。

一方の経営会議は、各社が任意に設置する社内会議です。開催頻度や構成員、取り扱う議題などは各社の社内規程で定めます。ただし、会社法上、取締役会で決議すべき事項を経営会議の決議だけで代替することはできません。

観点取締役会経営会議
法的位置付け会社法上の法定機関任意に設置する社内会議
議事録作成義務会社法第369条第3項により義務法的な義務はない(社内規程で任意設定)
記載項目会社法施行規則第101条で規定各社の判断で設計
保管義務10年間の本店備置(会社法第371条)法的義務なし
署名押印出席取締役・監査役の署名または記名押印が必要法的義務なし

取締役会議事録で最優先されるのは、「会社法上の必須要件を満たす」ことです。経営会議の議事録は「社内の意思決定と情報共有のしやすさ」が優先軸になります。

同じことは社内会議全般にも当てはまります。社内会議の議事録の書き方には法的な決まりがなく、必須項目も読み手に合わせて自社で決められます。取締役会議事録には、その自由度がありません。

社内で運用していると、経営会議向けに作成したテンプレートを取締役会にも流用してしまうことがあります。しかし、法定要件を満たさないまま運用してしまうと、後述する罰則や訴訟リスクにつながる恐れがあります。テンプレートは分けて管理しましょう。

経営会議の議事録の書き方を整理したい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

参考記事:【テンプレあり】経営会議の議事録の書き方|議事録の必要性や効率化のためのAIツールも紹介

3. 議事録作成を怠った場合の罰則(会社法第976条)

取締役会議事録を作成しなかった場合や、本店に備え置かなかった場合は、会社法第976条に基づき100万円以下の過料が科される可能性があります。

過料は刑事罰ではなく、行政上の秩序罰です。それでも、会社法第976条により、取締役・監査役などの役員等が過料の対象となる可能性があります。さらに、議事録に不備があると、後日、取締役会でどのような審議・決議が行われたかを確認・立証しにくくなるおそれがあります。

「速やかに作成する」「決められた項目を漏らさず書く」「定められた期間きちんと備え置く」という3つを徹底することが、役員と会社の双方を守ることにつながります。

取締役会議事録に記載すべき事項

記載項目の根拠は、会社法施行規則第101条です。ただ、条文は項目を列挙しているだけなので、実務では「どこまで書けばよいのか」で手が止まります。ここでは、通常開催時の主な記載事項と、みなし決議・報告省略時の特則を、書き方のポイントとあわせて順に見ていきます。

1. 開催日時・場所

議事録には、取締役会が開催された日時と場所を記載します。遠隔地からWeb会議システムなどで参加した取締役等がいる場合は、その出席方法も記載します。実務上、開始時刻と終了時刻まで記録しておくと、会議の経過を確認しやすくなります。

たとえば、本社会議室を会場とし、海外拠点の取締役がオンラインで参加した場合は「開催場所:東京本社A会議室。取締役〇〇はWeb会議システムにより出席」のように記載します。

2. 議事の経過の要領およびその結果

取締役会で報告・審議された議題と、その結果(決議の成立・否決・継続審議など)を記載します。「経過の要領」とは、議論の流れがわかる程度の要約を指します。逐語の発言記録までは求められていません。

たとえば、議題ごとに「報告事項」「決議事項」を区別し、決議事項については、審議の経過と決議結果がわかるように記載します。必要に応じて、賛成・反対・棄権の状況などを記録しておくと、決議が成立した経緯を確認しやすくなります。

会社法第369条第1項は、決議について「議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で決する」と定めています。定足数と賛成数を議事録で示せることが、決議の有効性を立証する根拠になります。

3. 特別の利害関係を有する取締役の氏名

ある決議事項について特別の利害関係を有する取締役は、その決議に参加できません(会社法第369条第2項)。議事録には、特別の利害関係を有する取締役の氏名を記載します。

実務上は、その取締役が議決に加わっていないことが分かるよう、その旨も記録しておくとよいでしょう。

たとえば、ある取締役が代表を務める会社との取引を承認する議題では、その取締役を特別利害関係者として記載し、議決から外す必要があります。記載漏れがあると、議事録の法定記載事項に不備が生じます。

また、特別の利害関係を有する取締役が実際に議決に加わった場合は、決議の効力が争われる可能性があるため注意してください。

4. 取締役会で述べられた意見・発言の概要

会社法施行規則第101条第3項第6号では、特定の事項について述べられた意見や発言の概要を議事録に記載することが定められています。

具体的には、競業・利益相反取引を行った取締役による重要な事実の報告、会計参与の意見、監査役の報告・意見など、会社法施行規則第101条第3項第6号が列挙する規定に基づく意見・発言が対象です。発言者の氏名と発言内容の要旨をセットで残します。

ここは取締役会の透明性を支える重要なパートです。すべての発言を逐語で残す必要はありませんが、後から「誰がどんな意見を述べたか」を再現できる粒度で記録しておきましょう。

実務では、議事録に求める粒度が社内で二極化する傾向があります。全発言を正確に残したい「詳細派」と、要点だけで十分という「要点派」の二極です。取締役会・法務・コンプライアンス系の会議は詳細派の典型で、発言レベルの記録が求められます。

全社一律のテンプレートで運用すると、詳細派からは「情報が抜けている」、要点派からは「冗長で読まれない」と双方から不満が出やすくなります。会議の性質に応じてフォーマットを使い分ける視点を持っておくと安心です。

5. 出席者の氏名

実務上は、出席した取締役・監査役を含め、出席者を一覧で記録しておくと確認しやすくなります。なお、会社法施行規則第101条第3項第7号が明示的に記載を求めているのは、取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名または名称です。

出席した取締役・監査役については、書面の議事録では会社法第369条第3項により署名または記名押印が必要です。欠席者がいる場合は、欠席者の氏名と欠席である旨を分けて記載しておくと、定足数の確認がしやすくなります。

オンラインで参加した取締役は、その旨をかっこ書きで明示すると、議事の透明性が高まります。

6. 議長の氏名

取締役会を主宰した議長の氏名を記載します。多くの会社では代表取締役社長が議長を務めますが、定款や社内規程で別の取締役を議長として定めている場合もあります。

議長は議事の進行と決議の宣言に責任を持つ立場のため、誰が議長であったかは議事録の信頼性に直結する情報です。

7. みなし決議の場合の特則

会社法第370条は、定款に定めがある場合、取締役が決議事項を提案し、その事項について議決に加わることができる取締役全員が書面または電磁的記録で同意し、監査役設置会社では監査役が異議を述べなかったときに、その提案を可決する取締役会の決議があったものとみなす制度を認めています。これを「書面決議」または「みなし決議」と呼びます。

ただし、このみなし決議が利用できるのは、あらかじめ定款にその旨を定めている会社に限られます。定款に定めがない場合はみなし決議を利用できないため、まずは自社の定款に第370条に基づく規定があるかを確認してください。

みなし決議の場合は、議事録に以下の項目を記載します。

  • 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
  • その事項の提案をした取締役の氏名
  • 取締役会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録を作成した取締役の氏名

取締役の同意は書面または電磁的記録で行えますが、議事録の法定記載事項は同じです。

8. その他施行規則第101条で定められる事項

会社法施行規則第101条では、通常開催した取締役会についても、一定の場合に追加の記載を求めています。たとえば、特別取締役による取締役会である場合はその旨を、取締役・監査役などによる一定の請求・招集手続に基づいて開催された場合はその旨を記載します。

また、会社法第372条第1項により取締役会への報告を省略した場合は、次の事項を議事録に記載します。

– 報告を要しないものとされた事項の内容 – 報告を要しないものとされた日 – 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

なお、代表取締役・業務執行取締役による会社法第363条第2項の職務執行状況の報告は、この方法で省略できません。

該当する会議でなければ記載は不要ですが、自社のガバナンス体制に応じてチェックしておきたい項目です。

参照:会社法施行規則 | e-Gov法令検索

取締役会議事録の書き方|3つの記載例

項目がそろっても、白紙を前にすると書き出しで迷います。通常開催した取締役会と、会社法第370条のみなし決議では、議事録に記載すべき事項が異なります。また、みなし決議における取締役の同意は、書面または電磁的記録で行えます。

ここからは、実務で使いやすい3つの記載例を紹介します。

1. 通常の取締役会決議の記載例

最も一般的な、対面または会議システムでの取締役会の議事録です。次のような構成で記載します。

取締役会議事録

1. 開催日時:2026年6月8日(月)10:00〜12:00
2. 開催場所:東京都港区〇〇 当社本社 第1会議室
3. 出席者:

   取締役 〇〇〇〇(議長)、〇〇〇〇、〇〇〇〇、〇〇〇〇
   監査役 〇〇〇〇、〇〇〇〇

4. 欠席者:取締役 〇〇〇〇
5. 議事の経過の要領およびその結果

【第1号議案】〇〇〇〇に関する件

議長より、〇〇〇〇について説明があり、慎重審議の結果、出席取締役全員一致により原案どおり承認可決された。

【第2号議案】〇〇〇〇に関する件

本議案について、取締役〇〇〇〇は会社法第369条第2項に定める特別の利害関係を有するため、議決から除斥された。残る出席取締役全員一致により、原案どおり承認可決された。以上の決議を明確にするため、本議事録を作成し、出席した取締役および監査役全員が下記に記名押印する。

2026年6月8日

株式会社〇〇〇〇 取締役会
議長 取締役〇〇〇〇 印
取締役〇〇〇〇 印
取締役〇〇〇〇 印
取締役〇〇〇〇 印
監査役〇〇〇〇 印
監査役〇〇〇〇 印

2. 書面で同意を得たみなし決議の記載例

会社法第370条に基づき、当該事項について議決に加わることができる取締役全員が書面で同意し、監査役設置会社では監査役が異議を述べなかった場合の記載例です。

取締役会議事録(書面決議)

1. 取締役会の決議があったものとみなされた事項

   〇〇〇〇に関する件

2. 提案をした取締役の氏名

   取締役〇〇〇〇

3. 取締役会の決議があったものとみなされた日

   2026年6月8日

4. 議事録を作成した取締役の氏名

   取締役〇〇〇〇

上記の提案について、本議案について議決に加わることができる取締役全員が書面により同意の意思表示を行い、監査役設置会社である当社の監査役が異議を述べなかったため、会社法第370条および定款第〇条の規定により、取締役会の決議があったものとみなす。

2026年6月8日

株式会社〇〇〇〇
議事録作成者 取締役〇〇〇〇

3. 電磁的記録で同意を得たみなし決議の記載例

書面決議と同様の手続きを、電子データ(メール・社内システム・電子契約サービスなど)で行う場合の記載例です。

取締役会議事録(みなし決議・電磁的記録による同意)

1. 取締役会の決議があったものとみなされた事項

   〇〇〇〇に関する件

2. 提案をした取締役の氏名

   取締役〇〇〇〇

3. 同意の意思表示の方法

   当社が運用する電子契約サービス上での電子署名による同意

4. 取締役会の決議があったものとみなされた日

 2026年6月8日(本議案について議決に加わることができる取締役全員の同意が完了した日)

5. 議事録を作成した取締役の氏名

   取締役〇〇〇〇

上記の提案について、本議案について議決に加わることができる取締役全員が電磁的記録により同意の意思表示を行い、監査役設置会社である当社の監査役が異議を述べなかったため、会社法第370条および定款第〇条の規定により、取締役会の決議があったものとみなす。

本議事録は電磁的記録として保管する。

2026年6月8日

株式会社〇〇〇〇

議事録作成者 取締役〇〇〇〇(電子署名)

通常開催した取締役会と、会社法第370条のみなし決議では、議事録に記載すべき事項が異なります。一方、みなし決議で取締役の同意を書面で行う場合と電磁的記録で行う場合では、法定の議事録記載事項が別々に定められているわけではありません。実際の運用に合わせてテンプレートを用意しておくと、記載漏れを防ぎやすくなります。

署名・押印と電子化のルール

通常開催した取締役会では、議事録を書面で作成する場合は出席取締役・監査役の署名または記名押印が、電磁的記録で作成する場合は所定の電子署名が必要です。紙と電子で要件が異なるため、それぞれ確認しておきましょう。

1. 出席取締役・監査役の署名または記名押印が原則

会社法第369条第3項は、議事録について、出席した取締役および監査役が署名し、または記名押印しなければならないと定めています。

「署名」は本人が自署する方法、「記名押印」は氏名を記載・印字したうえで押印する方法です。会社法第369条第3項自体は印鑑の種類を指定していませんが、議事録を登記申請の添付書面として用いる場合などには、別途、押印や印鑑証明書に関する要件が生じることがあります。

注意点は、書面の議事録では、取締役会に出席した取締役および監査役が対象となる点です。会計参与・会計監査人・株主など、その他の出席者まで会社法第369条第3項による署名・記名押印の対象になるわけではありません。

書面の議事録で、出席取締役・監査役の署名または記名押印が欠けると、会社法第369条第3項の形式要件を満たしません。ただし、署名・記名押印の欠缺だけで、取締役会の決議自体が直ちに無効になるとは限りません。会議終了後、すみやかに押印を回す運用フローを社内で標準化しておきましょう。

2. 電子署名による作成も法的に有効

電磁的記録で議事録を作成する場合は、会社法第369条第4項に基づき、会社法施行規則第225条に定める電子署名を施すことで、署名・記名押印に代えることができます。

会社法施行規則第225条では、電子署名について、電子文書がその措置を行った者の作成に係るものであることを示せることと、その後に改変されていないかを確認できることの2点を要件としています。

電子署名の方法には、公的個人認証など本人名義の電子証明書を用いる方法のほか、一定の要件を満たすリモート署名や事業者署名型の電子署名サービスがあります。

重要なのは、特定の方式を選ぶことではなく、利用する仕組みが会社法施行規則第225条の要件を満たしているかを確認することです。法務省も、利用者の意思に基づいて電子署名が行われる一定の事業者署名型サービスについて、電子署名として扱い得るとの考え方を示しています。

なお、タイムスタンプは、特定の時点で電子文書が存在していたことや、その後に改変されていないことを確認するために利用される仕組みです。電子署名と組み合わせて利用することはできますが、タイムスタンプそのものを会社法第369条第4項の電子署名の代わりにすることはできません。

3. 法務省民事局の見解と電子署名の選択肢

法務省民事局(参事官室)は2020年5月29日、取締役会議事録への電子署名について、立会人型(事業者署名型)の電子契約サービスを用いた電子署名も会社法上の要件を満たし得るとの解釈を明らかにしました。これは既存の規定について解釈を明確にしたもので、会社法施行規則そのものが改正されたわけではありません。

これにより、各社の実情に応じて電子署名の方式を柔軟に選べるようになりました。事業継続計画(BCP)や働き方の変化に対応するため、押印のために出社する運用から脱却した会社も増えています。

なお、取締役会議事録を商業登記の添付書面として使用する場合は、会社法上の電子署名要件に加えて、登記手続上利用できる電子署名・電子証明書の要件も確認する必要があります。

参照:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索
参照:法務省|商業・法人登記のオンライン申請について

取締役会議事録の保管・閲覧ルール

取締役会議事録は、作ったあとの運用まで含めて義務です。定められた期間の保管と、関係者からの閲覧請求への対応が求められます。

1. 10年間の本店備置義務

会社法第371条第1項は、通常開催した取締役会では議事録を、会社法第370条のみなし決議では同意の意思表示を記載・記録した書面または電磁的記録を、取締役会の日または決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置かなければならないと定めています。

紙で作成した議事録は本店の保管庫に、電磁的記録の場合は本店からアクセス可能なサーバー上に、それぞれ保管します。10年は決して短くない期間です。担当者の異動・退職があっても継続的に管理できる仕組みを整えておくことが重要です。

たとえば、紙のみで運用していると、保管庫の容量・経年劣化・検索性といった課題が発生しやすくなります。電子化と組み合わせることで、検索性と耐久性の両方を高められます。

なお、保存すべき期間は会議体によってまちまちです。社内の記録をまとめて整理したい場合は、会議別の法定保存期間を確認しておくと、保管ルールを一本化しやすくなります。

2. 株主・債権者からの閲覧・謄写請求への対応

取締役会議事録は、株主や債権者から閲覧・謄写の請求を受けることがあります。請求の根拠は会社法第371条で、それぞれ次のように扱われます。

  • 株主:その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内に、議事録等の閲覧・謄写を請求できます(会社法第371条第2項)。ただし、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、裁判所の許可が必要です(同条第3項)
  • 親会社社員(親会社の株主など):その権利を行使するため必要な場合に、裁判所の許可を得て請求が可能(同条第5項)
  • 債権者:役員の責任を追及するために必要な場合に、裁判所の許可を得て請求が可能(同条第4項)

請求があった場合に備えて、議事録の体裁・記載内容が、社外の株主・債権者による閲覧請求にも耐えうるものになっているか定期的に見直しておきましょう。

3. 紙運用と電子保管それぞれの注意点

紙運用と電子保管には、それぞれ別の注意点があります。

紙運用の場合は、保管庫の施錠管理、出し入れ記録の運用、長期保管による劣化対策(複写の作成・移管)などが課題です。一方、電子保管の場合は、改ざん防止のための電子署名・タイムスタンプ、サーバーの冗長化、アクセス権限の管理が課題になります。

どちらを選んでも、「10年間、改ざんなく、必要なときに取り出せる」状態を維持することが目的です。自社の体制と監査方針に合わせて、紙と電子のどちらか、または両方を組み合わせる方式を選びましょう。

4. 元の記録に戻れる状態が議事録の正当性を支える

議事録は、作成者が「重要だ」と判断した範囲で要点化された文書です。会議で交わされたやり取りそのものが残るわけではありません。ここに、法定議事録ならではの難しさがあります。

利害が対立する会議では、記録をどちらか一方がまとめること自体が不信の種になります。Otolioがある商談で聞いた話では、労使の公式協議の記録について「片方が録音データをすべて持って編集すると、恣意的に切り取られる懸念がある」という理由から、あえて外部の速記会社を挟み、まとめた記録を双方に平等に渡す建付けを続けてきた組織がありました。外部委託の理由がコストでも機密保持でもなく、手続きの正当性にあった例です。

取締役会も、構造としては同じものを抱えています。株主代表訴訟や閲覧・謄写請求の場面では、議事録の記載が事実に沿っているかを社外から問われます。手元に要点だけが残り、そこに至る前の記録が失われていると、記載の妥当性を示す手段は限られてしまいます。

打ち手はシンプルです。議事録本体とあわせて、当日の録音・配布資料・進行表といった元の記録を必要な範囲で残しておくと、議事録の内容を後から確認しやすくなります。

ただし、これらの元記録まで会社法第371条により10年間保存する義務があるわけではありません。録音には機密情報や個人情報が含まれる可能性もあるため、保存目的や社内の情報管理規程に応じて保存期間・アクセス権限を定めましょう。

要点から元の発言に遡れる状態をどの程度・どの期間維持するかは、自社の運用に応じて決めます。電子データを保存する場合は、改ざん防止やアクセス管理も含め、継続しやすい仕組みを整えておくことが重要です。

機密性の高い取締役会議事録を効率的に作成する3つの工夫

実務でもう1つ大きな悩みになるのが「作成負荷の重さ」です。取締役会は議論の機密性が高いため外部委託しづらく、役員自身が議事録を作成しているケースも珍しくありません。

1. アジェンダと議事進行表を事前に揃える

取締役会の前に、議題ごとの議事進行表(アジェンダと決議事項のセット)を準備しておくと、議事録作成の負担が大きく下がります。

たとえば、「議題1:〇〇承認の件 → 結果:承認・否決のいずれか」のように決議結果だけ埋めれば形になるテンプレートを用意しておけば、会議中の記録は要点のメモだけで済みます。

事前準備をせずに会議に臨むと、議論を追いながら構成を考えることになり、議事録担当者は議論への参加が浅くなりがちです。事前に骨組みを固めておくことで、当日は議論に集中できる状態をつくれます。

2. 録音・文字起こしで「言った言わない」をなくす

機密性の高い取締役会こそ、後から事実を確認できる記録が重要です。録音と文字起こしを併用することで、「あの発言は誰がしたか」「条件付きの承認だったのか無条件だったのか」といった事実確認をスムーズに行えます。

会議終了後にメモと録音を突き合わせることで、議事の経過の要領を正確に再現できます。記憶が薄れる前に整理すれば、議事録の精度も上がります。

取締役会のような機密会議では、文字起こしを外部に委託することにセキュリティと費用の両面で課題を感じ、内製化へ動く企業が少なくありません。委託費を抑えたいというコスト面だけでなく、機密情報を社外に出さずに守りたいというセキュリティ面、納品を待たずすぐ共有したいというスピード面のニーズが同時にあります。内製で記録から共有までを完結させることは、これらを一度に満たす現実的な打ち手になります。

参考記事:機密性の高い役員会の議事録作成時間を50%削減。Otolioで情報の可視化を強化する

3. 機密管理に強いAI議事録ツールを活用する

近年は、機密性の高い会議でも安心して使えるAI議事録ツールが登場しています。会議の音声をAIが自動で文字起こしし、要点を整理してくれる仕組みです。

取締役会で活用するうえで重要なのは、機密管理と話者識別の2点です。

機密管理については、入力した音声・文字起こしデータがAIモデルの学習に利用されるかに加え、保存期間・アクセス管理などのデータ取り扱い条件を確認しましょう。

学習利用の有無だけで情報漏えいリスクが決まるわけではないため、各社のデータ利用方針を総合的に確認することが重要です。

話者識別については、複数の取締役・監査役が発言する場面で、誰の発言かを自動で整理してくれるかが重要です。出席者が多い取締役会では、後から「特別の利害関係を有する取締役の発言」「監査役の意見」を抜き出す作業を効率化しやすくなります。

たとえば、株式会社大和バルブの事例では、機密性の高い役員会で役員自ら議事録を作成していたところ、Otolioを導入したことで作成時間が50%削減されました。同社では、外部委託では情報漏洩リスクがある一方、役員自らの作成は負荷が大きいというジレンマがあり、内製のまま効率化できるツールを探していたとのことです。

Otolioは、特許取得済の独自アルゴリズムでお客様の音声をAIに学習させずに精度を高める設計です。話者分離は最大20名まで対応しているため、取締役会のように多人数が議論する場面でも実用的に使えます。

機密会議の議事録作成を内製で続けたい会社にとって、AI議事録ツールは現実的な選択肢です。導入前にはトライアルで自社の会議音声を試し、文字起こし精度と運用フィット感を確認することをおすすめします。

まとめ|法定要件を満たす取締役会議事録を正確かつ効率的に作成しよう

ここまで、取締役会議事録の法的位置付け・主な記載事項・3パターンの記載例・署名押印と電子化・10年保管のルール、そして機密性の高い会議を効率化する工夫まで解説しました。

ポイントは次の4つです。

– 取締役会議事録は会社法上の法定文書であり、作成・記載・備置にルールがあります。 – 通常開催、みなし決議、報告省略など、会議の形態に応じた法定記載事項を確認する必要があります。 – 10年間の備置義務の対象を正しく把握し、録音などの元記録は別途、自社の情報管理方針に沿って保存期間を定めます。 – 文字起こしや話者整理などの反復作業はツールで効率化できますが、法定要件の確認は人が行う必要があります。

法令準拠と実務効率は両立できます。記載要件をテンプレートに落とし込み、運用を標準化することで、担当者の負荷を下げながら、法的なリスクの低減にもつながります。ぜひ、自社の取締役会議事録の運用を見直してみてはいかがでしょうか。

取締役会議事録の体裁を整え終えても、最後にもう一つ判断が残ります。それは「この運用を、ツールに任せるかどうか」です。会社法上の必須項目は人が確認すべきですが、文字起こしや話者の整理といった反復作業は機械が得意とする領域です。一度試してみると、書類の正確性と担当者の負担のバランスがどこまで変わるかが具体的にわかります。

法定要件と機密性を両立する、内製の議事録運用へ

取締役会の議事録は、外部に出せない機密会議であるからこそ、内製のまま正確かつ効率的に作れる状態が理想です。Otolioは、AIに音声を学習させない設計と最大20名の話者分離で、機密性と作成効率の両方を支えます。14日間の無料トライアルで、自社の取締役会の実音声で精度をお確かめいただけます。

この記事を書いた人
エピックベース株式会社|マーケティング部|青木喬平

2023年にエピックベースに入社し、累計利用社数8,000以上「Otolio」のマーケティングを担当。 本ブログでは、議事録・文字起こし・生成AI・AIエージェントに関するノウハウや、企業が業務効率化の実現・DXの推進に必要な情報を現場のリアルな視点からお届けしています。 ※ 本ブログはOtolio運営元であるエピックベース株式会社の社員が執筆・編集しています。

よくある質問とその回答

Q. 取締役会議事録は紙と電子のどちらで作成するのが良いですか?

必要な要件を満たせば、紙・電磁的記録のどちらでも作成できます。電子化する場合は、必要な電子署名を施し、アクセス権限や改ざん防止措置を適切に設けることで、検索・共有の効率を高められます。自社の登記・監査・情報管理の運用に合わせて選びましょう。両方を併用し、電磁的記録を原本として保管し、必要に応じて紙の控えを併用する運用も考えられます。

Q. 出席取締役の押印が一部欠けた場合、議事録は無効になりますか?

直ちに決議が無効になるとは限りませんが、議事録の真正性を立証する根拠が弱くなります。やむを得ず押印が後日になる場合は、その理由を社内記録に残し、可能なかぎり早期にすべての押印を整える運用をおすすめします。

Q. 経営会議の議事録と取締役会議事録を1つにまとめて運用しても良いですか?

おすすめしません。両者は法的な位置付けが異なるため、テンプレート・運用フロー・保管ルールを分けて管理することで、法定要件の取りこぼしを防ぎやすくなります。

Q. 取締役会議事録の作成期限はありますか?

会社法には、取締役会議事録を「会議後○日以内」に作成するという明示的な期限はありません。実務上は、内容確認や署名・記名押印等に必要な社内期限を定め、速やかに作成する運用が適切です。みなし決議の場合は、取締役会の決議があったものとみなされた日を議事録に記載します。

Q. AI議事録ツールを使えば、署名・押印は不要になりますか?

いいえ。AI議事録ツールはあくまで議事録の作成を支援する仕組みであり、会社法上の要件を代替するものではありません。通常の取締役会を開催した場合、書面の議事録では出席取締役・監査役の署名または記名押印、電磁的記録では所定の電子署名が必要です。なお、会社法第370条のみなし決議は実際の出席者がいないため、通常開催時とは署名等の扱いが異なります。

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